はじめに:メンズの「ナチュラルブラウン」こそ技術が問われる
メンズのナチュラルブラウン(NB)は、褪色対策の調合が鍵です。こんにちは、美容師歴20年以上の「髪技屋さん」です。サロンワークにおいて、メンズのお客様から「派手すぎず、でも地毛より少し明るく」というオーダーは非常に多いですよね。その筆頭がミルボン オルディーブのナチュラルブラウン(NB)系です。しかし、この「普通の色」こそ、褪色が早い、赤みが出る、といったメンズ特有の悩みに直面しやすい領域でもあります。この記事では、NBの褪色を防ぎ、ワンランク上の仕上がりを実現する調合の裏技とサロンワークのTipsを徹底解説します。
2025年メンズトレンドと「ナチュラルブラウン」の重要性
2025年も「クリーン&ナチュラル」な髪色がトレンドです。近年のメンズトレンドは、ハイトーンのベージュ系やシルバー系と並行して、「地毛風カラー」や「暗髪」といったナチュラル志向が大きな柱となっています。特に30代以上のビジネスマン層からは、清潔感を重視したオーダーが主流です。
ここでオルディーブのNBが活躍します。NBは日本人のアンダートーンを最も美しく見せるブラウン設計ですが、そのまま使うだけでは「ただの茶髪」になりがちです。2025年に求められるのは、ナチュラルな中に微かな「くすみ感」や「透明感」を感じさせるブラウン。これを実現し、かつ褪色をコントロールすることが、プロの美容師としての付加価値になります。
なぜメンズのナチュラルブラウンは褪色しやすいのか?
メンズ特有の髪質とライフスタイルが褪色を早めます。「1ヶ月も経たずに赤みや黄みが出てきた」という経験はありませんか? NBが褪色しやすい主な原因は3つあります。
- アンダートーンの影響: 日本人男性の多くは、アンダーに強い赤みを持っています。NBの染料が抜けると、この赤みが浮き出てきます。特に6〜8レベルで染めた場合に顕著です。
- ライフスタイル: メンズは女性に比べ、毎日のシャンプー回数が多い傾向があります。また、洗浄力の強いシャンプーを使っているケースも多く、物理的に染料の流出が早まります。
- 髪の短さ: ショートヘアが多いため、根本の新生部がすぐに目立ちます。さらに、毛先は前回のカラー履歴が残っているため、新生部と既染部で薬剤を正確に塗り分けないと、⚠️褪色時にムラが目立ちやすくなります。
これらの要因を理解した上で、褪色後も赤みや黄みを抑え、キレイな状態を保つ「調合」こそがプロの腕の見せ所です。
【裏技】ミルボン オルディーブNB 褪色防止の調合レシピと施術手順
「補色」と「低アルカリ」の活用が褪色防止の鍵です。ナチュラルブラウンをただ塗るのではなく、アンダートーンを補正し、ダメージを抑える薬剤選定を行います。ここではミルボン オルディーブのベーシックトーン(NB)を軸に、アディクシーやシーディルを組み合わせた実践的レシピを紹介します。
カラー施術の48時間前には、必ず皮膚アレルギー試験(パッチテスト)を実施してください。アレルギー反応が確認された場合は施術を中止し、専門医の診断を受けてください。
📋 褪色防止NBカラー 施術手順
アンダー診断と褪色予測
「NB + 補色」の調合(低オキシ活用)
根元〜毛先の塗り分けと放置
STEP1: アンダー診断と褪色予測
最も重要なプロセスです。お客様の現在のアンダーレベルと、赤みが出やすいか、黄みが出やすいかを見極めます。例えば、8レベルのアンダーでも、赤みが強い髪質と黄みが強い髪質では、補色の選定が全く異なります。
STEP2: 褪色防止の調合
ここが最大の裏技ポイントです。NBをベースにしつつ、褪色時に出てくるイヤな色を打ち消す「補色」をミックスします。私のサロンでは、オルディーブ アディクシーのラインナップを補色として多用します。
使用するミルボン オルディーブやアディクシーの薬剤は、画面下部の「PR⭐️Amazonで探す」からチェックできます。
STEP3: 塗布と放置
メンズのショートヘアでも、新生部と既染部のオキシ濃度を変えることが褪色ムラを防ぐ鉄則です。新生部は6%でしっかりリフトし、既染部は3%や1.5%、あるいはオルディーブ シーディル(低アルカリ)を使ってダメージと褪色をコントロールします。
📊 メンズNB 褪色防止 調合レシピ
| ターゲット | ベース状態 | 調合レシピ(1剤:2剤 = 1:1) | 放置時間 | 施術時間(目安) |
|---|---|---|---|---|
| 赤み消し地毛風カラー | 6レベル(バージン毛) |
[新生部] オルディーブ 8-NB 40g + アディクシー 7-SmokyTopaz 10g + OXY 6% 50g (仕上がり7レベル) |
20分 | 約90分 |
| 黄み消しくすみブラウン | 10レベル(褪色毛) |
[既染部] オルディーブ 8-NB 30g + アディクシー 9-Silver 10g + アディクシー 9-PurpleGarnet 5g + OXY 3% 45g (仕上がり8レベル) |
15分 | 約75分 |
| 白髪ぼかしNB | 白髪率30%(7レベル) |
[全体] オルディーブ シーディル nNB (7) 40g + オルディーブ 8-NB 10g + OXY 6% 50g (仕上がり7レベル・低アルカリ処方) |
25分 | 約100分 |
※上記レシピはショート〜ミディアムヘア目安(1剤合計40g〜50g)。髪の量に応じて調整してください。
顧客対応のコツ:ホームケア提案
サロンでの仕上がりを維持するために、ホームケアのアドバイスは必須です。特にメンズはカラーシャンプーの重要性を知らない方が多いです。
- アッシュ・くすみ系の場合: 黄ばみ防止のため、ミルボン アディクシー カラーケアシャンプー(パープル)を週2〜3回使用するよう推奨します。
- ナチュラルブラウン維持の場合: 色素の流出を抑えるミルボン カラープリザーブラインなど、カラーヘア用のマイルドな洗浄成分(ベタイン系など)のシャンプーを提案します。
- 説明方法: 「毎日使うシャンプーをこれに変えるだけで、イヤな赤みが出るのを防げますよ」と、ヘアケアのメリットを具体的に伝えます。
髪質別:NB調合の微調整
同じNBでも、髪質によって発色と褪色は異なります。
- 硬毛・太毛(赤みが出やすい): NBに対して、アディクシーのスモーキートパーズ(マット系)やコバルトブルー(アッシュ系)を通常より多め(20%程度)にミックスし、赤みを強力に打ち消します。
- 軟毛・細毛(沈みやすい): 狙うレベルより1トーン明るいNBを選定します(例:8レベル狙いなら9-NB)。補色は10%以内に抑え、オキシは3%を基本にし、沈み込みを防ぎます。
オルディーブNBが似合う顧客タイプと提案法
NBは「清潔感」を求める全世代のメンズに提案可能です。ナチュラルブラウンは万能ですが、特に以下のようなお客様には積極的に提案すべきです。
顧客タイプ別提案
- 30代〜40代 ビジネスマン:
- ニーズ: 清潔感、白髪のぼかし、派手すぎない。
- 提案: 「6〜7レベルのNBをベースに、ブルーを少し混ぜて赤みを消し、地毛のようなツヤと深みを出しましょう。白髪も自然にぼかせます」
- 20代 学生・クリエイター(初カラー):
- ニーズ: 変化は欲しいが、奇抜すぎるのは不安。
- 提案: 「8〜9レベルのNBに、アッシュやシルバーを混ぜて、光に透ける『くすみブラウン』にしませんか? 褪色しても黄みが出にくいですよ」
- ハイトーンからのトーンダウン:
- ニーズ: 就活や心機一転で暗くしたいが、黒染めは嫌。
- 提案: 「5レベルのNBにアディクシーのディープブルーを混ぜて、暗くても透明感のある色味にします。これなら次回のカラーチェンジも可能です」
プロのコツとNG例:褪色ムラを防ぐ技術
オキシの使い分けと補色の微量が、プロの仕上がりを分けます。NBのようなベーシックカラーこそ、繊細な技術差が出ます。
⚖️ NBカラー技術 NG vs OK
❌ NG例
- 新生部も既染部も同じ6%オキシで塗布
- 赤み消しにマット系を30%以上入れる
- トーンダウン時にNB単品で使用する
✅ OK例
- 新生部6%、既染部3%で塗り分ける
- 補色は10%〜20%で微調整する
- トーンダウン時はブルーやバイオレットを補色に入れる
⚠️ 特に注意すべきは、補色の入れすぎです。赤みを消したいからとマット(グリーン系)を入れすぎると、褪色時に髪がくすみすぎたり、緑がかってしまったりします。補色はあくまで「アンダーの補正」と「褪色時のコントロール」のため、総量の10%〜20%に留めるのが鉄則です。
失敗時のリカバリー方法
万が一、NB系の施術で失敗した際の対処法です。
- 毛先が沈み込みすぎた(暗くなった)場合:
慌てて脱染剤を使う前に、オルディーブのクリア(CL)と6%オキシを1:2で混合し、沈んだ部分に塗布します。5〜10分放置し、アルカリの力で染料をわずかにリフトさせ、色を明るく調整します。
- 赤みが想定より強く出た場合:
シャンプー台で、アディクシーのコバルトブルーやスモーキートパーズ(低レベル)を3%オキシと1:1で混ぜ、水で少し薄めたものを塗布し、5分ほどトーニング(色かぶせ)します。赤みを素早く補正できます。
- 色ムラになった場合:
明るくなってしまった部分(ムラ)に、暗くなってしまった部分の薬剤の残りにクリア剤と低オキシ(1.5%など)を混ぜてトーンを合わせ、塗布して均一化を図ります。このリカバリーには正確なヘアカラーレシピの再構築が必要です。
比較:オルディーブ NB vs アディクシー(ブラウン系)
NBは「安定感」、アディクシーは「赤み消し特化」です。同じミルボンのブラウン系でも、特性が異なります。
📊 薬剤特性 比較表
| 薬剤 | 主な特徴 | 得意な施術 | 褪色の傾向 |
|---|---|---|---|
| オルディーブ (NB) | バランスの取れた王道ブラウン。ツヤと安定感。 | 白髪染め、地毛風カラー、全世代対応。 | 穏やかだが、アンダーの赤みが出やすい。 |
| アディクシー (スモーキートパーズ等) | 青ベースで赤みを強力に消す。くすみと透明感。 | 赤み消し、くすみカラー、透明感カラー。 | 赤みは出にくいが、マット(緑)に寄りやすい。 |
私の経験上、NBの「安定感・ツヤ」と、アディクシーの「赤み消し・くすみ感」を、レシピのようにミックス(例: NB 4 : アディクシー 1)することで、両方のメリットを活かした褪色防止が可能になります。
よくある質問(FAQ)
メンズのNBカラーに関する現場での疑問にお答えします。
まとめ:NBを極めてメンズカラーの単価アップへ
今回は、ミルボン オルディーブ ナチュラルブラウン(NB)を軸にした、メンズ向けの褪色防止テクニックと調合裏技を解説しました。
ナチュラルブラウンは「守り」のカラーではなく「攻め」の技術です。一見すると普通のブラウンですが、補色の選定、オキシの使い分け、低アルカリ薬剤の活用といったプロの技術を詰め込むことで、褪色の過程までデザインできます。「あなたのサロンで染めると、色が抜けてもキレイ」という評価は、お客様のロイヤリティを確実に高めます。
ぜひ、明日からのサロンワークで、NBにアディクシーやシーディルを「10%ミックス」することから試してみてください。褪色の違いに驚くはずです。
📚 参考文献
- ミルボン公式サイト:オルディーブ 製品情報
- ミルボン公式サイト:オルディーブ アディクシー カラーチャート
- ミルボン公式サイト:オルディーブ シーディル 製品情報
- 日本ヘアカラー協会(JHCA)技術ガイドライン
※本記事はプロの美容師向けの技術情報であり、セルフカラーを推奨するものではありません。アレルギーや症状が気になる場合は医師に相談してください。
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