- セルフカラーで暗髪にする際の「色ムラ」や「暗すぎ」失敗を防ぐ方法
- 初心者でも簡単な市販カラー剤(暗髪向け)の選び方
- 美容師が実践する正しいブロッキングと塗布の手順
ヘアカラーは使用48時間前にパッチテストが必須です。 アレルギーは突然発症します。 詳しい手順は本文の安全ガイドで必ず確認してください。
はじめに
暗髪セルフカラー成功の鍵は「薬剤選び」と「均一な塗布」です。 こんにちは、美容師の「髪技屋さん」です。 「美容室代を節約したい」「手軽に暗髪にしたい」とセルフカラーに挑戦する方は多いですが、同時に「根元だけ染まらない」「毛先が暗く沈んだ」「ムラがひどい」といった失敗相談も後を絶ちません。
特に暗髪(ダークトーン)は、黒染めと違って微妙な色合いが求められるため、初心者には難易度が高いと思われがちです。 しかし、安心してください。 失敗には必ず原因があり、正しい手順とちょっとしたコツさえ知れば、自宅でもサロンに近い仕上がりを目指せます。 この記事では、初心者が暗髪セルフカラーで失敗するリスクを最小限に抑えるための全知識を、プロの視点から徹底的に解説します。
セルフカラーでよくある失敗とその原因
セルフカラーで暗髪に挑戦した結果、「こんなはずじゃなかった」と駆け込んでくるお客様は本当に多いです。 まずは、なぜ失敗が起きるのか、その原因を知ることから始めましょう。
先日も、30代の女性(髪質は普通)が深刻な顔でご来店されました。 市販の「リーゼ泡カラー」のアッシュ系を使い、根元のプリン(黒髪2cm)を直そうとしたそうです。 元の髪色は毛先が明るいブラウンで、ダメージもありました。 結果は、根元の黒髪が思ったより染まらず、逆にダメージのあった毛先だけが薬剤を吸い込みすぎて、暗く緑がかって沈んでしまいました。 典型的な「逆プリン」状態です。 原因は、ダメージ毛は色素が入りやすい特性を知らず、全体を一気に塗布してしまったこと。 プロの視点では、まず染まりにくい根元を塗り、時間差で毛先を塗るべきでした。 サロンで毛先の色素調整と根元のリタッチを行い、次回は必ず根元から塗るよう指導しました。
暗髪セルフカラー 失敗トップ3
よくある失敗と原因
失敗1: 深刻な色ムラ(後頭部が暗い)
自分では見えにくい後頭部や襟足は、薬剤の塗布量が少なくなりがちです。 逆に、塗りやすい顔周りや頭頂部(トップ)は薬剤を付けすぎて明るくなり、結果としてムラになります。
対策: 髪を「4分区(ブロッキング)」し、塗りにくい襟足から塗布を開始します。
失敗2: 毛先だけが暗く沈む(逆プリン)
すでにカラーやパーマでダメージしている毛先は、薬剤(特に暗い色素)を過剰に吸収してしまいます。 健康な根元と同じ感覚で塗ると、毛先だけが真っ黒に沈んでしまいます。
対策: 染まりにくい根元を先に塗り、指定時間の10分前など、最後に毛先へ薬剤を馴染ませます。
失敗3: 思ったより暗すぎた(黒染め状態)
暗髪=黒染めではありません。 初心者は「失敗したくない」という心理から、パッケージの見本色よりも「髪色もどし」や「ナチュラルブラック」を選びがちです。 これらの薬剤は非常に色素が濃く、一度染めると次に明るくするのが非常に困難になります。
対策: 「黒染め」と書かれた製品を避け、「ダークアッシュ」や「ダークショコラ」など、色味のある暗いトーンを選びます。
安全性・準備ガイド
仕上がりより重要!パッチテストは必ず48時間前に実施してください。 セルフカラーで最も怖いのは、仕上がりの失敗ではなく「アレルギー反応」です。 ヘアカラーによるアレルギー(ジアミンアレルギー)は、ある日突然発症します。 「今まで大丈夫だったから」という油断が一番危険です。
⚠️ 重篤な場合は顔全体が腫れ上がり、呼吸困難に陥るケースも報告されています。 自分の身を守るため、以下の手順で必ずパッチテスト(皮膚アレルギー試験)を行ってください。
- 薬剤を混ぜる: 説明書通りに少量の1剤と2剤を混ぜ、綿棒で採取します。
- 塗布する: 腕の内側など、皮膚の柔らかい部分に10円玉大に薄く塗ります。(絆創膏などは貼りません)
- 48時間放置: 塗布後30分程度で乾かし、そのまま触らずに48時間(2日間)様子を見ます。 ※途中で入浴する場合は、塗布部を濡らしたり擦ったりしないよう注意してください。
- 確認: 48時間が経過するまでに、塗布部に「かゆみ」「赤み」「腫れ」「ブツブツ」などの異常が出た場合は、すぐに洗い流し、そのカラー剤の使用は絶対に中止してください。
セルフカラーに必要な準備物
- ヘアカラー剤(髪が長い人、多い人は2箱)
- 汚れてもいい服(前開きのもの)、またはケープ
- 汚れてもいいタオル
- イヤーキャップ(あると便利)
- ワセリン or 油性クリーム(顔周り、耳、首筋に塗る)
- ダッカール(髪を分けるクリップ)4つ以上
- 手袋(付属のものでOK)
- タイマー
暗髪(ダークトーン)のセルフカラー施術方法
📋 セルフカラー成功の手順
パッチテストを48時間前に実施
髪を4分区に分け、均等に塗布
説明書通りの時間で丁寧に洗い流す
※4分区=髪を上下左右4つに分ける塗布技法。均等な薬剤配分により色ムラを防ぐプロの基本テクニック
以前、就活のためにブリーチした金髪を黒く戻したいという20代男性(髪質は太く硬い)を担当したことがあります。 彼には美容室に来る時間がなく、セルフカラーで挑戦したいと相談を受けました。 ブリーチ毛への黒染めは非常にムラになりやすく、薬剤も吸いやすい高難易度ケースです。 私は彼に「ビューティラボ ホイップヘアカラー」のナチュラルブラックを2箱(通常量の1.5倍)用意させ、徹底的に手順を指導しました。 最重要ポイントは「4分区」と「薬剤をケチらない」こと。 塗りにくい襟足から塗り始め、素早く後頭部、サイド、頭頂部と進め、最後に前髪を塗るよう指示しました。 結果、彼は薬剤をたっぷり使ったことで、硬い髪でもしっかり浸透し、ムラのない完璧な黒髪に成功しました。
詳しい塗布手順
STEP1: 準備とブロッキング まず、顔周りや耳、首筋にワセリンを塗って皮膚を保護します。 次に、髪を「4分区」に分けます。 つむじから耳の後ろを通るラインで前後(フロント・バック)に分け、さらにそれぞれを真ん中(正中線)で分けて、合計4つのブロックを作ります。 ダッカールでしっかり留めてください。 薬剤(例: リーゼ 泡カラーなど)を説明書通りに準備します。
STEP2: 塗布(塗る順番が命) 塗布は「染まりにくい場所」からが鉄則です。
- 襟足・後頭部 (バック): 最も塗りにくく、体温が低いため染まりにくい場所です。まずここから塗布します。
- 頭頂部・サイド (フロント): 次に頭頂部とサイドを塗ります。
- 根元 (プリン部分): 根元が黒く伸びている場合は、先に根元に薬剤をしっかり塗布します。
- 毛先 (ダメージ部分): 毛先は薬剤を吸い込みやすいため、⚠️ 指定放置時間の10分前など、最後に薬剤を馴染ませる程度にします。(※根元と毛先の色が均一な場合は、根元から毛先まで一気に塗布しても構いません)
STEP3: 放置と乳化 説明書に記載された時間(通常20〜30分)を守り、タイマーをセットして放置します。 自己判断で長く置いても、染まりが良くなるわけではなく、ダメージが増えるだけです。 時間が来たら、シャワーのお湯を少量手にとり、髪全体に馴染ませて優しくマッサージします(これを「乳化」と言います)。 乳化を行うことで、頭皮についた薬剤が落ちやすくなり、色ムラも均一になります。
STEP4: 洗い流しとケア ぬるま湯で、カラー剤の色が出なくなるまで(お湯が透明になるまで)しっかりとすすぎます。 その後、シャンプーを2回行い、付属のトリートメント(またはお手持ちのダメージケア用トリートメント)でしっかり保湿して完了です。 詳細は「髪の染め方」の記事でも解説しています。
髪質・ベース別のカラー選びのコツ
初心者が選びがちな「髪色もどし ナチュラルブラック」は、就活など「絶対に黒くしなければならない」時以外は避けるのが賢明です。 一度黒染めをすると、美容室でも明るくするのが非常に難しくなります。
2025年のトレンドは、暗くても重く見えない「透明感」のある暗髪です。 「アッシュグレー」「ラベンダーグレージュ」「オリーブグレージュ」などは、ブリーチなしでも髪の赤みを抑え、光に透けるような柔らかい印象を与えます。 自分のパーソナルカラーに合わせて選ぶのも良いでしょう。
🔵 泡タイプ (リーゼ, ビューティラボ等) がおすすめな人
- セルフカラーが初めての初心者
- 塗布に時間をかけたくない人
- 髪の量が多い、または長い人(ムラになりにくい)
🟠 クリームタイプ (ロレアル パリ エクセランス等) がおすすめな人
- 根元のプリンだけを正確に染めたい人(リタッチ)
- 薬剤の浸透に時間がかかる硬い髪質の人
- 液だれを絶対に防ぎたい人
色持ちを良くする!メンテナンス方法
カラー専用シャンプーで色持ちが1.5倍(体感値)長くなります。 せっかく綺麗に染めた暗髪も、日々のケアを怠るとすぐに色落ちしてしまいます。 色落ちの最大の原因は、シャンプーによる洗浄と、髪が濡れていることによる色素の流出です。
特に染めた直後1週間は、髪の状態がアルカリ性に傾いており、キューティクルが開きやすいデリケートな状態です。 この期間に洗浄力の強いシャンプーを使うと、一気に色が抜けてしまいます。
⚖️ 暗髪カラー NG vs OK
❌ NG行動
- 染めた当日にシャンプーする
- 洗浄力の強い市販シャンプーを使う
- 髪を乾かさずに寝る(濡れたまま放置)
✅ OK行動
- 染毛後24時間はシャンプーを我慢する
- カラー専用(アミノ酸系)シャンプーを使う
- お風呂から出たらすぐに髪を乾かす
アッシュ系やグレー系の透明感カラーは、黄色みが出やすいため、週に1〜2回「紫シャンプー(ムラシャン)」を使うと、黄ばみを抑えて綺麗な色味をキープできます。 また、セルフカラーは少なからず髪に負担をかけるため、日々のダメージケアも忘れずに行いましょう。
よくある質問(FAQ)
セルフカラーでよくある暗髪の疑問にお答えします。 ここでは、お客様から特によくいただく質問をまとめました。
Q1: 黒染め(ブラック)を使わずに暗くしたい場合は?
A1: はい、可能です。「黒染め」と表記のある製品は避け、「ダークブラウン」「アッシュグレー」「ダークショコラ」など、色味のある暗いトーンを選んでください。6トーン以下の暗い色を選べば、黒に近い自然な暗髪に仕上がります。
Q2: 思ったより暗くなりすぎました。明るく直せますか?
A2: ⚠️ いいえ、セルフでの修正はほぼ不可能です。 一度暗く染めた髪から色素を抜くのは、美容室でもブリーチ剤など強力な薬剤が必要となり、髪に大きな負担がかかります。 シャンプーを繰り返してもわずかにしか明るくならず、髪が傷むだけなので避けましょう。
Q3: 市販の黒染めはどれくらいで色落ちしますか?
A3: 製品によりますが、市販の「黒染め」は色素が非常に濃く、長期間(半年〜1年以上)残留することが多いです。 「1週間で落ちる」と謳った製品でも、髪質によっては完全に落ちない場合があります。 逆に、ダメージ毛の場合はすぐに色落ちしてまだらになることもあり、予測が難しいのが実情です。
まとめ
暗髪セルフカラー成功の鍵は、事前の準備と正しい手順です。 初心者が市販ヘアカラーで失敗する最大の原因は、「パッチテストの省略」「薬剤のケチりすぎ」「塗る順番の間違い」の3点です。
特に暗髪セルフカラーは、色ムラや暗すぎ失敗が目立ちやすいです。 必ずパッチテストを48時間前に行い、薬剤は髪の量に合わせて十分な量(ロングヘアなら2箱)を準備してください。 そして、プロのテクニックである「4分区」と「染まりにくい襟足からの塗布」を実践するだけで、あなたのセルフカラーの仕上がりは格段に向上します。 正しいヘアケアで、綺麗な暗髪を長く楽しんでください。
🎥 セルフカラーの塗布手順を動画で確認したい方は、 YouTubeチャンネルもチェックしてください!
📚 参考文献
- ホーユー公式サイト(ビューティラボ, リーゼ※花王)
- 花王公式サイト(リーゼ)
- ロレアルパリ公式サイト(エクセランス)
- 日本ヘアカラー工業会(JHCA)- パッチテストの重要性について
このセルフカラーが役立ったら、同じ悩みを持つお友達にもシェアしてみてください!
