美容師法における「罰則」とは?
国家試験では「どんな悪いことをすると、どうなるか」が問われます。 みなさん、こんにちは!美容師歴20年以上の現役美容師です。関係法規の勉強、進んでいますか?「罰金とか法律の条文とか、難しくて眠くなる…」という声が聞こえてきそうです。でも、実はこの「罰則規定」の分野、覚えるパターンが決まっているボーナスステージなんです。
美容師法におけるペナルティは、大きく分けて「刑事罰(罰金)」と「行政処分(免許取消など)」の2種類しかありません。ここを混同せずに整理できれば、試験当日に迷うことはなくなります。サロンワークでお客様の安全を守るための大切なルールですので、しっかりと頭に入れておきましょう。
押さえるべき基礎知識:行政処分と刑罰の違い
「行政処分」は将来に向かって権利を制限し、「刑罰」は過去の行為を裁くものです。 まずは、言葉の定義からクリアにしていきましょう。試験では「業務停止処分」と「罰金刑」の区別が非常に重要です。
1. 行政処分(大臣や知事が命じるもの)
行政処分とは、国や自治体が「あなたには美容師を続ける資格がない(または一時的にダメ)」と判断して下す命令のことです。主に以下の3つがあります。
- 免許取消処分:最も重い処分。美容師免許そのものを失います。
- 業務停止処分:期間を決めて、美容師としての仕事を禁じます。
- 閉鎖命令:美容所(お店)を使えなくする命令です。
2. 刑罰(裁判所が科すもの)
美容師法に違反した「犯罪」として扱われるケースです。美容師法には懲役刑の規定はなく、主に30万円以下の罰金が科されます。「え、懲役はないの?」と思った方、鋭いです。美容師法単体では罰金刑が中心ですが、無免許で怪我をさせた場合などは刑法の業務上過失致傷罪などが適用されることもあります。
試験での出題形式とパターン
「誰が処分を行うか」という権限者(大臣・知事)の入れ替え問題が頻出です。 国家試験では、単に「違反したらどうなる?」だけでなく、「誰が命令するか」を問う問題が非常に多く出題されます。以下の主語の対応関係を絶対に間違えないようにしましょう。
📋 処分権限者の鉄則ルール
免許を与えるのも取り消すのも 厚生労働大臣
お店や現場の衛生管理は 都道府県知事 (保健所設置市市長など)
違反行為と罰則の詳細解説
罰金刑は一律「30万円以下」と覚え、処分の対象行為を区別しましょう。 ここでは、具体的な違反内容と、それに対するペナルティを詳しく見ていきます。ここが試験の核心部分です。
1. 30万円以下の罰金になる行為
美容師法第18条および19条で規定されています。以下の行為をした場合、裁判所により罰金刑が科されます。
- 無免許営業:美容師免許を持っていないのに、業として美容を行った場合。
- 無届開設:都道府県知事に届け出をせずに美容所を開設した場合。
- 使用前検査違反:開設届は出したが、検査確認を受ける前にお店を使い始めた場合。
- 立入検査拒否:環境衛生監視員の立入検査を拒否したり、妨害したりした場合。
- 閉鎖命令違反:知事から「お店を閉めなさい」と言われたのに営業を続けた場合。
法人の従業員(美容師)が違反をした場合、その行為者だけでなく、法人や雇用主(開設者)にも罰金刑が科されます(美容師法第20条)。「スタッフが勝手にやった」は通用しません。
2. 行政処分の詳細比較
ややこしい「取消」「停止」「閉鎖」の違いを表にまとめました。試験直前はこの表を見直してください。
📊 行政処分・罰則の完全比較表
| 処分の種類 | 権限者 | 対象者 | 主な理由・条件 |
|---|---|---|---|
| 免許取消処分 | 厚生労働大臣 | 美容師 | ・心身の障害により業務適正を欠く ・業務停止処分に違反した |
| 業務停止処分 | 都道府県知事 | 美容師 | ・伝染性の疾病にかかった ・衛生措置(消毒など)を怠った |
| 閉鎖命令 | 都道府県知事 | 開設者 (オーナー) | ・従業者に衛生措置を守らせない ・管理美容師を置かない ・構造設備が基準不適合 |
| 罰金刑 (30万円以下) | 裁判所 | 違反者全員 | ・無免許営業 ・無届開設 ・立入検査拒否 |
効率的な暗記テクニック
「免許は大臣、現場は知事」「罰金は全部30万」とシンプル化して覚えましょう。 法律用語は難しいですが、試験に出るポイントは限られています。以下のコツを使って記憶に定着させましょう。
- 金額は一択:「美容師法の罰金=30万円以下」これだけ!迷ったらこれを選びます。
- 大臣の仕事:「免許」という言葉がついたら厚生労働大臣(取消、交付)。
- 知事の仕事:「現場の衛生」「お店の管理」に関わることは都道府県知事(停止、閉鎖)。
間違いやすいポイント:免許証の携帯義務
よくある質問ですが、「免許証を不携帯(店に持っていない)」だけでは、即座に法的な罰則規定(罰金など)はありません。ただし、お店には免許証の掲示義務(本物または写しをお客さまに見える位置に掲示する義務)はあるため、これに違反すると開設者が罰則を受ける可能性があります。個人が財布に免許を入れていないこと自体は罪になりません。
練習問題にチャレンジ
過去問の傾向を掴んで、知識を定着させましょう。 それでは、実際にどのような形で出題されるのか確認してみましょう。
【模擬問題】関係法規・制度
美容師法の罰則および処分に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 1. 美容師が伝染性の疾病にかかったときは、厚生労働大臣が業務停止を命ずることができる。
- 2. 美容所の開設者が環境衛生監視員の立入検査を拒んだときは、50万円以下の罰金に処せられる。
- ✅ 3. 無免許で美容を業とした者は、30万円以下の罰金に処せられる。
- 4. 美容師が業務停止処分に違反して業務を行った場合、都道府県知事は免許を取り消すことができる。
- 1:誤り。疾病による業務停止は現場の問題なので「都道府県知事」の管轄です。
- 2:誤り。罰金の上限は「30万円以下」です。
- 3:正解。美容師法第18条の規定通りです。
- 4:誤り。免許の取消権限を持っているのは「厚生労働大臣」だけです。
よくある質問(FAQ)
受験生がよく疑問に思う、細かい規定のグレーゾーンを解消します。
Q1. 免許証の書き換え(氏名変更など)を忘れていたら罰金になりますか?
A. 直接的な罰金の規定はありません。 名簿の登録事項(氏名や本籍地)に変更があった場合、30日以内に名簿の訂正を申請しなければなりませんが(第3条)、これ自体に直接の罰則規定は見当たりません。しかし、変更していない免許証では就職や開設届出の際にトラブルになるため、必ず手続きを行いましょう。一方で、「開設届」の内容変更を届け出なかった場合は、30万円以下の罰金の対象となります。
Q2. 「両罰規定」とは何ですか?
A. 実行犯だけでなく、雇い主も罰するルールです。 例えば、雇われている美容師が勝手に無消毒の器具を使ったり、無免許で働いたりした場合、その美容師本人だけでなく、雇用主である法人やオーナー(開設者)に対しても、同じ刑(罰金刑)が科されることがあります。サロン全体で法令遵守が必要ということです。
Q3. 学生アルバイトがシャンプーをするのは違反ですか?
A. 原則として違反(無免許営業)となります。 美容師法では、美容の業を行うには免許が必要です。シャンプーも美容行為の一部とみなされるため、免許のない学生が業として(報酬を得て反復継続して)行うことは法的には認められていません。ただし、実務実習など特定の教育カリキュラム下での例外を除き、基本的には30万円以下の罰金対象になり得る行為です。
まとめ
「30万円以下」と「権限者の区別」だけで、正答率は大幅にアップします。 今回の記事のポイントをおさらいしましょう。
- 美容師法の罰金は基本的に「30万円以下の罰金」一択。
- 免許の取消は厚生労働大臣、現場の停止・閉鎖は都道府県知事。
- 無免許営業や立入検査拒否は立派な犯罪(罰金刑)になる。
- 開設者(オーナー)には、スタッフの違反に対する責任(両罰規定)がある。
この分野は暗記すれば必ず点が取れる場所です。複雑に考えすぎず、キーワードをセットで覚えて試験に臨んでくださいね。応援しています!
🔍 最新情報の確認をお忘れなく
美容師法や衛生基準は、法改正や社会情勢により変更されることがあります。本記事の情報は投稿時点のものであり、古くなっている可能性があります。
⚠️ 受験直前には、必ず以下の公式サイトで最新の試験要項・出題基準・法令をご確認ください。
• 理容師美容師試験研修センター(試験要項・過去問)
• 厚生労働省(美容師法・関係法令)
• 通学中の美容専門学校(最新教科書)
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📚 参考文献
- 公益財団法人理容師美容師試験研修センター(公式サイト・過去試験問題)
- 厚生労働省(美容師法概要・関係法令ページ)
- e-Gov法令検索「美容師法」(昭和三十二年法律第百六十三号)
※本記事は美容師国家試験の学習を補助する一般情報です。健康上の問題(アレルギー、皮膚疾患等)については専門の医師に相談してください。
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