美容所の開設と届出のルール
開設届出後に構造設備の検査を受け、確認証交付後に営業開始です。
美容室をオープンするためには、ただ物件を借りて道具を揃えるだけでは営業できません。美容師法第11条および第12条に基づき、厳格な手続きが定められています。
最も重要なのは、「都道府県知事への届出」と「開設検査」の順序です。届出をしただけでは営業を開始できず、検査に合格して初めてお客様を迎えることができます。
📋 開設までの絶対フロー
都道府県知事に届出 (保健所へ書類提出)
構造設備の検査 (基準適合の確認)
使用開始 (営業オープン)
保健所による検査の種類と権限
開設時の検査と、営業中の立入検査の2種類が存在します。
国家試験では「誰が」「どのような権限で」検査を行うかが問われます。権限を持つのは都道府県知事(保健所設置市では市長、特別区では区長)ですが、実務を行うのは環境衛生監視員です。
検査には大きく分けて以下の2つがあります。
- 開設検査(使用前検査):美容所を使用する前に行われる必須の検査。構造設備が衛生基準(床面積、照明、換気、消毒設備など)を満たしているか確認します。
- 立入検査(第14条):営業開始後に、衛生措置が保たれているかを確認するために行われる抜き打ち検査です。
閉鎖命令が出される具体的なケース
無届営業や衛生措置違反など、公衆衛生に危険がある場合に発令されます。
美容師法第15条では、都道府県知事が「期間を定めて美容所の閉鎖を命じることができる」ケースを定めています。これは営業停止処分に相当する重い措置です。
閉鎖命令は「開設者(オーナー)」に対して出されます。美容師個人への「業務停止処分」とは区別して覚えましょう。
主に以下の違反があった場合に閉鎖命令が出されます。
- 無確認使用:届出はしたが、検査確認を受ける前に営業した場合。
- 衛生措置義務違反:開設者が講ずべき衛生措置(照明、換気、清潔保持など)を怠った場合。
- 従業者への監督不十分:美容師が伝染性疾病にかかっていたり、衛生措置を怠ったりしているのに、業務に従事させた場合。
「閉鎖命令」と「免許取消」の違い
対象が「店」か「人」か、権限者が「知事」か「大臣」かで区別します。
ここが試験の最大のひっかけポイントです。美容師免許に関する処分と、美容所に関する処分をごちゃ混ぜにしないように整理しましょう。
📊 処分内容の比較表
| 項目 | 閉鎖命令 | 免許取消・業務停止 |
|---|---|---|
| 対象 | 美容所(店) | 美容師(人) |
| 権限者 | 都道府県知事 | 厚生労働大臣 |
| 主な理由 | 構造設備不備、衛生管理不徹底 | 心身の障害、業務上の不正、罰金刑 |
環境衛生監視員の役割とは
美容所に立ち入り、衛生状況を検査・指導する専門職です。
環境衛生監視員は、美容所などの衛生施設を監督するために、保健所などに配置されている公務員です。美容師法第14条に基づき、以下の権限を持っています。
- 立入検査権:美容所に立ち入り、構造設備や衛生措置を検査する。
- 報告徴収権:必要に応じて、開設者から状況の報告を求める。
彼らは警察官ではないため「逮捕」などはできませんが、正当な理由なく立入検査を拒否すると罰金(30万円以下)の対象となります。
効率的な暗記テクニック
「知事が閉めて、大臣が取り消す」と主語を明確にして覚えましょう。
ややこしい権限問題は、語呂合わせやフレーズでリズムよく覚えるのがおすすめです。
「店を知る(管理する)のは知事(閉鎖命令)」
「免許を大事にするのは大臣(免許取消)」
練習問題
実際の試験形式で、ひっかけポイントを確認しましょう。
【オリジナル問題】美容所の開設・閉鎖
美容所の開設および検査に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 1. 美容所を開設しようとする者は、あらかじめ厚生労働大臣に届け出なければならない。
- 2. 開設者は、届出を済ませれば、検査の完了を待たずに営業を開始することができる。
- ✅ 3. 都道府県知事は、開設者が衛生措置を講じないとき、期間を定めて閉鎖を命ずることができる。
- 4. 環境衛生監視員は、美容所の閉鎖を命ずる権限を有する。
1. 届出先は「都道府県知事」です。
2. 検査確認を受けるまで使用できません(第12条)。
4. 閉鎖命令権者は「都道府県知事」です。環境衛生監視員は検査と指導を行います。
よくある質問(FAQ)
受験生が疑問に持ちやすいポイントをまとめました。
Q1. 保健所長と都道府県知事、どちらが正解ですか?
試験においては「都道府県知事」と答えるのが原則です。ただし、法律上、保健所設置市(政令指定都市など)や特別区(東京23区)では、その権限が市長や区長に委譲されています。選択肢に「都道府県知事」がなく「保健所長」があるケースは稀ですが、大元の権限者は知事と覚えましょう。
Q2. 届出内容に変更があった場合はどうすればいいですか?
開設届出事項(開設者の住所氏名、施設の名称、従業員など)に変更があった場合は、速やかに都道府県知事に「変更の届出」を行う必要があります。開設者自体が変わる場合(譲渡や相続以外)は、新規開設の手続きが必要です。
Q3. 伝染性疾病にかかったら即座に閉鎖命令ですか?
即座にではありません。まず、その従業者は業務停止(就業禁止)となります。それでも開設者がその者を業務に従事させ続けた場合に、開設者に対して閉鎖命令が出されます。
まとめ
権限者とプロセスの違いを整理すれば、関係法規は得点源になります。
美容所の検査と閉鎖命令は、お客様の健康を守るための最重要項目です。
- 開設には届出 → 検査 → 確認の順序が必須。
- 閉鎖命令の権限は都道府県知事にある。
- 衛生措置違反や無確認営業が閉鎖の対象となる。
これらのルールは、試験合格のためだけでなく、将来サロンオーナーになった時にも必ず役立つ知識です。曖昧にせず、しっかり定着させましょう。
🔍 最新情報の確認をお忘れなく
美容師法や衛生基準は、法改正や社会情勢により変更されることがあります。本記事の情報は投稿時点のものであり、古くなっている可能性があります。
⚠️ 受験直前には、必ず以下の公式サイトで最新の試験要項・出題基準・法令をご確認ください。
• 理容師美容師試験研修センター(試験要項・過去問)
• 厚生労働省(美容師法・関係法令)
• 通学中の美容専門学校(最新教科書)
※本記事の情報に基づいて生じたいかなる損害についても、当サイトは責任を負いかねます。
📚 参考文献
- 公益財団法人理容師美容師試験研修センター(過去試験問題)
- 厚生労働省「美容師法」(e-Gov法令検索)
- 公益社団法人日本理容美容教育センター「関係法規・制度」
※本記事は美容師国家試験の学習を補助する一般情報です。健康上の問題(アレルギー、皮膚疾患等)については専門の医師に相談してください。
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