労働基準法とは? 試験に出る重要ポイント
労働者の生存権を保障する最低基準を定めた法律です。美容師国家試験の「関係法規・制度」において、労働基準法は理容師法・美容師法に次いで出題頻度が高い分野です。特に、私たちの業界は長時間労働になりがちだからこそ、法律で定められた「最低ライン」を知っておく必要があります。
この法律は、労働条件(賃金、時間、休日など)の最低基準を定めており、この基準を下回る契約は、たとえ労働者が同意していても無効となります。試験では、具体的な数値(日数、時間)や、使用者の義務(何をしなければならないか)が問われます。
まずは全体像を把握し、その後で細かい数字を頭に入れていきましょう。
【重要】労働契約と解雇のルール
契約時の書面明示と解雇時の30日前予告は超頻出です。ここが試験で最も狙われやすいポイントの一つです。美容室に就職する際、あるいは将来スタッフを雇う際に必ず関わる条文ですので、しっかり理解しておきましょう。
1. 労働条件の明示(第15条)
使用者は、労働契約を結ぶ際、労働者に対して賃金や労働時間などの条件を明示しなければなりません。特に重要なのが、必ず書面で明示しなければならない事項(絶対的明示事項)です。
📊 書面明示が必要な絶対的明示事項
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 契約期間 | いつまで働くか(期間の定めの有無) |
| 就業場所・業務 | どこで、どんな仕事をするか |
| 労働時間・休日 | 始業・終業時刻、休憩、休日、休暇など |
| 賃金 | 決定方法、計算方法、支払時期 |
| 退職 | 退職に関する事項(解雇の事由を含む) |
これらが明示された条件と事実が異なっていた場合、労働者は即時に労働契約を解除できます。この「即時に」という部分も過去問で問われたことがあります。
2. 解雇の予告(第20条)
使用者が労働者を解雇しようとする場合、以下のいずれかの対応が必要です。突然「明日から来なくていい」と言うことは、原則としてできません。
- 少なくとも30日前に予告する。
- 30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う。
- 予告日数と手当の日数を合わせて30日分以上にする(例:10日前に予告+20日分の手当)。
以下の場合は、労働基準監督署長の認定を受ければ、予告なしで即時解雇できます。ただし「認定」が必要な点に注意! * 天災事変で事業継続が不可能な場合 * 労働者の責に帰すべき事由がある場合
【数値】賃金・労働時間・休憩・休日の法定基準
1日8時間・週40時間が原則。休憩は6時間超で45分です。このセクションは数字の暗記がすべてです。美容業界の実態と混同しないよう、あくまで「法律上の原則」を覚えましょう。
1. 賃金支払いの5原則(第24条)
賃金は、通貨で、直接労働者に、全額を、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければなりません。これを「賃金支払いの5原則」と呼びます。
2. 法定労働時間と休憩(第32条・34条)
労働時間の原則は以下の通りです。これを超える場合は「36(サブロク)協定」の締結と割増賃金(25%以上)の支払いが必要です。
- 🕐 労働時間: 1日8時間以内、週40時間以内
- ☕ 休憩時間: 労働時間が6時間を超える場合=45分以上、8時間を超える場合=1時間以上
- 📅 休日: 毎週少なくとも1回、または4週間を通じて4日以上
※特例措置対象事業場: 常時10人未満の労働者を使用する商業、映画・演劇業、保健衛生業(美容業含む)、接客娯楽業については、週44時間まで労働させることができます。美容室はここに含まれることが多いです。
3. 年次有給休暇(第39条)
雇い入れの日から6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者には、最低10労働日の有給休暇を与えなければなりません。
【特例】年少者と妊産婦の保護規定
18歳未満の深夜業禁止と、産前6週・産後8週の休業が鍵。女性が多い美容業界では、母性保護規定も試験によく出ます。また、アシスタントとして働く未成年者(年少者)のルールも重要です。
📊 年少者と妊産婦の制限比較
| 対象 | 年少者(満18歳未満) | 妊産婦(妊娠中・産後1年未満) |
|---|---|---|
| 時間外・休日労働 | 原則禁止 | 請求があれば禁止 |
| 深夜業(22時~5時) | 原則禁止 | 請求があれば禁止 |
| 危険有害業務 | 禁止(坑内労働など) | 禁止(請求有無に関わらず) |
| 必要な証明書 | 年齢証明書(住民票記載事項証明書) | - |
産前産後休業(第65条)
- 産前: 出産予定日の6週間前(多胎妊娠は14週間前)から、請求すれば休業できます。
- 産後: 出産の翌日から8週間は就業させてはいけません(強制)。ただし、6週間経過後に本人が請求し、医師が支障ないと認めた場合は就業可能です。
効率的な暗記テクニック
数字のペアを語呂で覚え、原則と例外を整理しましょう。労働基準法は数字を変えて引っ掛ける問題が多いため、正確な暗記が必要です。
📋 労働基準法攻略 3ステップ
「30」を制する 解雇予告は30日。これを基準に手当や短縮を理解。
「6と8」の壁 休憩は6時間超で45分、8時間超で60分。
産前産後 前6(ろく)、後8(や)で「ろくや」と覚える。
練習問題(過去問解説)
解雇予告と法定労働時間の計算問題に慣れておきましょう。実際に出題されたパターンをベースにした練習問題です。
【第44回 関係法規・制度】労働基準法
労働基準法に規定する解雇の予告に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 1. 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも10日前にその予告をしなければならない。
- 2. 30日前に予告をしない使用者は、平均賃金の10日分以上を支払わなければならない。
- ✅ 3. 予告の日数は、1日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができる。
- 4. 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合、労働基準監督署長の認定を受けなくても即時に解雇できる。
【模擬問題】労働時間と休憩
労働基準法に関する記述として誤っているものはどれか。
- 1. 労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分の休憩を与えなければならない。
- ✅ 2. 労働時間が8時間ちょうどの場合、少なくとも1時間の休憩を与えなければならない。
- 3. 年次有給休暇は、雇入れの日から6ヶ月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に与えられる。
- 4. 使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項などを記入しなければならない。
よくある質問(FAQ)
受験生が迷いやすい、例外規定や計算に関する疑問です。
Q. 美容室での「練習時間」は労働時間に含まれますか?
試験的な観点では、使用者の指揮命令下に置かれている時間(強制参加の研修など)は労働時間に含まれます。自由参加の自主練習であれば含まれませんが、実態として強制であれば労働時間とみなされます。
Q. 試用期間中の解雇でも30日前の予告は必要ですか?
原則として必要ですが、試用期間に入ってから14日以内であれば、予告なしで即時解雇が可能です(解雇予告の適用除外)。14日を超えた場合は、試用期間中であっても通常の解雇予告が必要です。
Q. 未成年のアシスタント(年少者)は残業できますか?
満18歳未満の年少者は、原則として時間外労働(残業)や休日労働をさせることができません。また、午後10時から午前5時までの深夜業も原則禁止されています。
まとめ
労働基準法は「30日・8時間・6ヶ月」などの数字を正確に。関係法規の中でも、私たちの生活に直結する法律です。以下のポイントを最終確認してください。
- 解雇予告: 30日前、または30日分の手当。
- 労働時間: 原則1日8時間、週40時間(特例44時間)。
- 休憩: 6時間超で45分、8時間超で60分。
- 有給: 6ヶ月勤務+8割出勤で10日。
- 産前産後: 前6週(請求)、後8週(強制)。
これらの数字を整理しておけば、確実に得点源にできます。頑張ってください!
🔍 最新情報の確認をお忘れなく
美容師法や衛生基準は、法改正や社会情勢により変更されることがあります。本記事の情報は投稿時点のものであり、古くなっている可能性があります。
⚠️ 受験直前には、必ず以下の公式サイトで最新の試験要項・出題基準・法令をご確認ください。
• 理容師美容師試験研修センター(試験要項・過去問)
• 厚生労働省(美容師法・関係法令)
• 通学中の美容専門学校(最新教科書)
※本記事の情報に基づいて生じたいかなる損害についても、当サイトは責任を負いかねます。
📚 参考文献
- 公益財団法人理容師美容師試験研修センター(過去試験問題)
- 厚生労働省(労働基準法・関係法令ページ)
- 公益社団法人日本理容美容教育センター「関係法規・制度」
※本記事は美容師国家試験の学習を補助する一般情報です。健康上の問題(アレルギー、皮膚疾患等)については専門の医師に相談してください。
この記事が役立ったら、同じ目標を持つ仲間とシェアしましょう!
