美容師法の基礎知識と頻出ポイント

読了時間:約10分 | 難易度:★★★(美容学生~国家試験受験者向け)
この記事の結論: 美容師法は「目的」「定義」「免許」「業務」「罰則」の5大分野が頻出。特に免許の欠格事由、美容所以外の業務、罰則の条文は失点しやすい最重要ポイントです。
美容師法の基礎知識と頻出ポイント

美容師法とは?(はじめに)

美容師法は美容師の資格と業務のルールを定めた法律です。美容師国家試験の「関係法規・制度」分野において、中核をなす最重要科目です。この法律の目的は、公衆衛生の向上にあります。

美容師法は、私たちが美容師として働くための根本的なルールブックです。国家試験では、この法律の条文(目的、定義、免許、業務、罰則など)の正確な理解が問われます。

特に「美容師でなければできない仕事は何か(業務独占)」、「美容所以外で仕事ができる例外は何か」といった部分は、実際のサロンワークにも直結するため、頻繁に出題されます。条文は堅苦しく感じますが、ポイントを押さえれば確実に得点源になります。

押さえるべき美容師法の基礎知識

美容師法は「美容師の定義」と「免許」が全ての基本です。まずは、美容師法の根幹である「目的(第1条)」と「定義(第2条)」、そして「免許(第3条~第5条)」に関する条文を正確に理解しましょう。

第1条:目的

美容師法の目的は、「美容師の資格を定めるとともに、美容の業務が適正に行われるように規律し、もつて公衆衛生の向上に資すること」と定められています。国家試験では、この「公衆衛生の向上」というキーワードが穴埋め問題などで問われることがあります。

第2条:定義

法律上、「美容」とは何か、「美容師」とは誰かを定義しています。

  • 美容とは: パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすることをいう。
  • 美容師とは: 厚生労働大臣の免許を受けて、美容を業とする者をいう。
  • 美容所とは: 美容の業を行うために設けられた施設をいう。

ここで重要なのは、「美容師=厚生労働大臣の免許」という点です。都道府県知事の免許ではないことを明確に区別してください。

第3条・第4条:免許の欠格事由

美容師になれない条件(欠格事由)を定めた、試験で非常によく問われる条文です。ここを曖昧にすると、多くの問題を落とす可能性があります。

欠格事由は「絶対的欠格事由」と「相対的欠格事由」に分かれます。

絶対的欠格事由(第3条):
これに該当すると「絶対に免許を与えられない」ものです。
* 心身の障害により美容師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの。
(※具体的には「精神の機能の障害」が挙げられます)

相対的欠格事由(第4条):
これに該当すると「免許を与えないことがある」というものです。つまり、状況によって判断が変わります。
* 美容師法または理容師法に違反し、罰金以上の刑に処せられた者。
* (第10条第3項の)免許取消処分を受けた後、再免許を受けようとする者。(※ただし、一定期間経過等の条件あり)

⚠️「心身の障害」が絶対的欠格事由であり、「法律違反による罰金刑」は相対的欠格事由である、という区別をはっきりつけましょう。

試験での出題形式とパターン

美容師法の試験は「正しいもの」か「誤っているもの」を選ぶ形式です。条文の細かい言い回しや例外規定を正確に暗記しているかが問われます。特に「業務」と「罰則」に関する問題は頻出です。

第6条:業務独占

「美容師でなければ、美容を業としてはならない」という規定です。これは、無資格者が美容行為(パーマ、カット、化粧など)を行ってお金をもらうことを禁止するものです。この条文があるからこそ、美容師は名称独占資格ではなく、業務独占資格と呼ばれます。

第7条:美容所以外の業務

原則として、美容師は美容所以外で美容の業をしてはいけません。しかし、例外として認められるケースが定められており、ここが試験の最頻出ポイントの一つです。

例外的に認められるのは、主に以下の2パターンです。

  1. 疾病その他の理由により、美容所に来ることができない者に対して行う場合。(例:病院への出張、高齢者施設への訪問美容
  2. 婚礼その他の儀式に参列する者に対してその儀式の直前に行う場合。(例:結婚式場でのヘアセット
  3. その他、都道府県(または保健所設置市)が条例で定める場合。

過去問では「友人の家でカットした」「地域のイベントで無料カットした」といった選択肢が「誤り」としてよく出題されます。

第8条:衛生措置

美容師が業務を行う上で講ずべき衛生措置(美容師法第8条)と、美容所の開設者が講ずべき衛生措置(美容師法第13条)は、内容が異なります。試験ではこの2つを混同させる問題が出ます。

  • 美容師が講ずべき措置(第8条): 皮ふに接する布片及び器具を清潔に保つこと、消毒など。
  • 開設者が講ずべき措置(第13条): 美容所の採光、照明、換気を十分にすること、消毒設備を設けることなど。

「換気」は開設者の義務であり、「器具の消毒」は美容師の義務、と区別しましょう。

美容師法の詳細解説(罰則・行政処分)

美容師法で最も重い罰則は「30万円以下の罰金」です。国家試験では、どの違反が「免許取消し」にあたるのか、「業務停止」なのか、「罰金」なのかを正確に分類することが求められます。

第10条:免許の取消し・業務の停止

厚生労働大臣が美容師に対して行う行政処分です。ここも非常に重要です。

📊 行政処分の比較

処分内容 該当する違反(主な例)
免許の取消し
(絶対的)
・第3条(絶対的欠格事由)に該当するに至ったとき。
(例:精神の機能の障害により業務適正が困難になった場合)
免許の取消し
(相対的)
・第4条(相対的欠格事由)に該当するに至ったとき。
(例:美容師法違反で罰金刑を受けた場合)
業務の停止
(期間を定める)
・第7条(美容所以外の業務)に違反したとき。
・第8条(美容師の衛生措置)に違反したとき。
美容の業を行うにあたり不衛生な行為をしたとき。

「罰金刑」は免許取消し(相対的)の対象になり得ますが、「業務停止」の対象には含まれていない点を押さえましょう。

罰則(第17条・第18条)

美容師法における罰則は、すべて「30万円以下の罰金」です。「懲役」や「100万円以下の罰金」といった選択肢は誤りです。

対象となる違反は主に以下の通りです。

  • 第6条違反:無免許で美容の業を行った者。
  • 第11条違反:美容所を開設したが、届出をしなかった者。
  • 第12条違反:美容所の構造設備について検査確認を受けなかった者。
  • 第14条違反:美容所の閉鎖命令に違反した者。
⚠️ 「業務停止」と「罰金」の混同

「美容所以外で業務をした(第7条違反)」場合、罰則(罰金)の対象ではなく、行政処分(業務停止)の対象です。このひっかけ問題は定番なので、絶対に間違えないでください。

効率的な暗記テクニック

美容師法は条文の数字と内容をセットで覚えるのが鉄則です。法律の勉強は退屈になりがちですが、語呂合わせやキーワードの関連付けで効率よく暗記しましょう。

📋 美容師法 暗記3ステップ

STEP1

「目的(1条)」「定義(2条)」を音読する

STEP2

「免許(3,4条)」「業務(6,7条)」を比較して覚える

STEP3

「処分(10条)」「罰則(17,18条)」の違いを明確にする

特に「処分(第10条)」と「罰則(第17条・18条)」は混同しやすいため、以下のような覚え方がおすすめです。

💡 暗記のコツ: 「処分と罰則」は「美容師(人)には処分、違反(行為)には罰金」と覚えましょう!
  • 処分 (第10条): 厚労大臣が「美容師」に対して行う「免許取消」や「業務停止」。
  • 罰則 (第17条): 「無免許営業」や「無届開設」といった「違反行為」に対する「30万円以下の罰金」。

練習問題

過去問を解くことで条文の問われ方が具体的にわかります。実際の国家試験で出題された形式の問題で、知識が定着したか確認してみましょう。

【第49回 問1】関係法規・制度

美容師法の目的に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  • 1. 美容師の経済的地位の向上
  • ✅ 2. 公衆衛生の向上
  • 3. 美容技術の発展
  • 4. 美容業界の振興
解説: 美容師法第1条(目的)に「公衆衛生の向上に資すること」と明記されています。他の選択肢は美容師法の直接的な目的ではありません。

【第50回 問3】関係法規・制度

美容師が美容所以外の場所で美容の業を行うことができる場合に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

  • 1. 疾病により美容所に来ることができない者に対して行う場合
  • 2. 婚礼の儀式に参列する者に対してその直前に行う場合
  • 3. 介護施設に入所している者に対して行う場合
  • ✅ 4. 地域の祭りの催物として行う場合
解説: 美容師法第7条および同法施行令で定められた例外規定に「地域の祭りの催物」は含まれません。1、2、3(1の疾病その他の理由に該当)は例外として認められています。

よくある質問(FAQ)

美容師法の勉強では「処分」と「罰則」の違いに悩む人が多いです。ここでは、受験生からよく寄せられる質問とその回答をまとめます。

Q1: 「免許取消し」と「業務停止」の違いが分かりません。

A1: どちらも美容師法第10条に基づく「行政処分」ですが、重さが異なります。
免許取消し: 美容師でなくなる最も重い処分です。主に「絶対的欠格事由(心身の障害など)」に該当した場合や、「罰金刑」を受けた場合(相対的)に科されます。
業務停止: 「期間を定めて」美容師の仕事ができなくなる処分です。「美容所以外での業務(第7条違反)」や「不衛生な行為」などが該当します。

Q2: 美容師法違反の罰則は、全部「30万円以下の罰金」と覚えて大丈夫ですか?

A2: はい、国家試験対策としては「美容師法の罰則=30万円以下の罰金」と覚えて問題ありません。美容師法には「懲役刑」や「50万円以下の罰金」といった規定はありません(第17条、第18条)。ただし、これは美容師法に限った話であり、他の法律(例:感染症法など)では異なる罰則が定められているため、科目ごとに区別してください。

Q3: 免許が取り消されたら、もう一度美容師になることはできますか?

A3: 可能です。ただし、美容師法第4条(相対的欠格事由)の規定に基づき、「免許を与えないことがある」とされています。免許取消しの理由によりますが、例えば法律違反による取消しの場合、一定期間の反省期間(再免許の申請までに一定期間の経過)や、更生の状況などが審査されます。自動的に再取得できるわけではありません。

⭐ まとめ

美容師法は「関係法規・制度」の得点源となる最重要科目です。出題範囲は限られており、頻出する条文(定義、欠格事由、美容所以外の業務、処分、罰則)を繰り返し学習すれば、必ず点数が取れます。

特に以下のポイントを混同しないように注意してください。

  • 美容師の免許は「厚生労働大臣」、美容所の開設届は「都道府県知事(保健所)」
  • 「心身の障害」は絶対的欠格事由(第3条)
  • 「美容所以外の業務(第7条違反)」は業務停止(第10条)の対象。
  • 「無免許営業(第6条違反)」は30万円以下の罰金(第17条)の対象。

条文の数字と内容を正確に関連付け、過去問演習を通じて「ひっかけパターン」に慣れておきましょう。地道な暗記が合格への一番の近道です。

🔍 最新情報の確認をお忘れなく

美容師法や衛生基準は、法改正や社会情勢により変更されることがあります。本記事の情報は投稿時点のものであり、古くなっている可能性があります。

⚠️ 受験直前には、必ず以下の公式サイトで最新の試験要項・出題基準・法令をご確認ください。

• 理容師美容師試験研修センター(試験要項・過去問)

• 厚生労働省(美容師法・関係法令)

• 通学中の美容専門学校(最新教科書)

※本記事の情報に基づいて生じたいかなる損害についても、当サイトは責任を負いかねます。

📚 参考文献

  • 公益財団法人理容師美容師試験研修センター(公式サイト・過去試験問題 第49回・第50回)
  • 厚生労働省(e-Gov法令検索「美容師法」)
  • 公益社団法人日本理容美容教育センター「新版 美容保健」
  • 公益社団法人日本理容美容教育センター「関係法規・制度」

※本記事は美容師国家試験の学習を補助する一般情報です。健康上の問題(アレルギー、皮膚疾患等)については専門の医師に相談してください。

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【髪技屋さんのプロフィール】

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