ペールトーンカラーの限界と可能性|ブリーチ回数と発色の関係

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この記事の結論: ペールトーンの限界は「ベースの限界」。ブリーチ回数とダメージ管理の理解が、美しい発色の可能性を広げます。
ペールトーンカラーの限界と可能性|ブリーチ回数と発色の関係

はじめに:ペールトーン施術の「限界」とは何か?

ペールトーンの「限界」とは、お客様の毛髪が耐えうる「ダメージの限界」と、理想の発色に必要な「ベース明度の限界」に他なりません。美容師歴20年以上の「髪技屋さん」です。サロン現場で透明感カラーの需要が定着して久しいですが、近年はその究極形とも言える「ペールトーン」のオーダーが増加しています。しかし、この施術はプロの技術が最も問われる領域です。お客様の「なりたい」と、髪の「耐えられる」の間で、どう最適解を見つけるか。この記事では、ペールトーンカラーの限界点、特にブリーチ回数と発色のシビアな関係、そしてその限界を超えるための「可能性」について、プロの視点で徹底的に掘り下げます。

2025年トレンド予測:なぜ今「ペールトーン」が求められるのか

2025年のカラートレンドは、より繊細で淡い「シアー(透け感)」や「アイシー(氷のような)」な質感が主流です。単なるハイトーンではなく、白に近いベースにほんのりと色味を感じさせるスタイルが、SNSを中心に支持を集めています。私のサロンでも、2024年後半から「ペールグリーン」や「アイスブルー」「シアーラベンダー」といった、寒色系のペールトーンに関する問い合わせが顕著です。これらは従来のベージュ系ハイトーンとは異なり、ベースの黄みを完璧に打ち消す高度なブリーチカラー技術が必須。お客様の美意識の高さが、私たち美容師の技術の「限界」を引き上げていると言えるでしょう。

ペールトーン発色の限界点:ブリーチ回数とベース明度の関係

ペールトーンの発色は、17レベル以上のベース明度がなければ事実上不可能です。これが技術的な「限界点」の第一関門です。多くのお客様は「ブリーチ1回」でペールトーンになれると誤解されていますが、プロの私たちはその難しさを知っています。ここで、ブリーチ回数による発色の限界を明確にしておきましょう。

ブリーチ1回の限界(15〜16レベル)

ブリーチ1回で到達できるのは、通常15〜16レベル(オレンジイエロー〜イエロー)です。この状態では、まだ多くの残留メラニン(特に黄み)が残っています。このベースにペールトーンの薬剤を乗せても、薬剤の淡い色素が黄みに負けてしまい、濁ったベージュになるか、最悪の場合、補色の紫が強く出すぎてくすんだグレーになってしまいます。 【限界】: 寒色系ペール(ブルー、グリーン、シルバー)は発色しません。 【可能性】: ペールピンクペールオレンジなど、ベースの黄みを利用できる暖色系ペールであれば、濃いめに調合することで表現可能な場合があります。

ブリーチ2回の限界(17〜18レベル)

ブリーチ2回で、ようやくペールトーンのスタートラインである17〜18レベル(ペールイエロー)に到達できます。ここまでくると、黄みがかなり薄れ、淡い色素を乗せる土台が整います。ただし、髪質によってはまだ僅かな黄みが残るため、補色による完璧なコントロールが求められます。 【限界】: 髪の体力はこの時点で限界に近いです。3回目を見据えたダメージケアが必須です。 【可能性】: ペールラベンダーペールグレージュペールピンクなど、多くのペールトーンが表現可能になります。寒色系も発色し始めますが、「アイスブルー」のようなクリアな寒色にはあと一歩足りないことが多いです。

ブリーチ3回以上の「可能性」(19レベル〜)

19レベル以上の「ホワイトベース」。ここまで到達するには、健康な髪であっても最低3回以上のブリーチが必要となるケースがほとんどです。髪は極度にデリケートな状態(濡らすとゴムのように伸びる寸前)になります。ここが、私たちが直面する最大の「限界」です。 【限界】: ⚠️ 物理的な毛髪の断裂。施術の可否は、毛髪診断で慎重に判断しなければなりません。 【可能性】: アイスブルーペールグリーンホワイトシルバーなど、トレンドの寒色系ペールトーンや、濁りのないクリアな発色が実現できます。まさに「可能性」が広がる領域ですが、それは「限界」と表裏一体です。

プロのための実践施術手順と調合レシピ

ペールトーン成功の鍵は、ベースレベルに合わせた「低オキシ」と「クリア剤」の活用です。ここからは、限界ギリギリの毛髪を扱うための具体的な手順と、2025年トレンドを意識した調合レシピを紹介します。

⚠️ 重要な注意事項

ペールトーン施術は高度な技術と知識を要します。施術48時間前のパッチテストを必ず実施し、アレルギー反応が出た場合は絶対に施術を中止してください。

📋 ペールトーン施術 3ステップ

STEP1

毛髪診断とベースメイク(ブリーチ)

STEP2

薬剤調合(クリア剤と補色の精密調整)

STEP3

オンカラー塗布(低オキシ・短時間放置)

STEP1: 毛髪診断とベースメイク(最重要)

ペールトーンの成否はここで9割決まります。目標の色に対し、ベースが何レベル必要かを判断します。寒色系なら最低18レベル、暖色系でも17レベルは欲しいところです。ブリーチ施術は、ミルボンアディクシー ハイブリーチウエラブリーチマスターなど、ハイリフト力とケア性を両立したプロ用薬剤を使用します。オキシは6%を基本に、リタッチやダメージレベルに合わせて塗り分けとタイム管理を徹底します。

STEP2: 薬剤調合(クリア剤と補色の精密調整)

ベースが整ったら、オンカラーの調合です。ペールトーンは色素が非常に淡いため、ベースの微細な黄みを打ち消す「補色」が鍵となります。18レベルベース(ペールイエロー)には、バイオレット(紫)を1〜3%、耳かき一杯程度で十分です。入れすぎると、くすみの原因になります。また、色素の沈み込みを防ぎ、透明感を出すために「クリア剤」を積極的に使います。ウエラ イルミナカラークリスタルや、ミルボン オルディーブクリアを、総量の30%〜50%混合するのが私のサロンでの標準です。

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STEP3: オンカラー塗布(低オキシ・短時間放置)

ブリーチ後の髪はアルカリに非常に敏感です。オンカラーのオキシは3%2%、あるいは1.5%といった低濃度を使用し、髪への負担と色素の急激な沈み込みを防ぎます。塗布はスピードが命です。特に毛先やダメージ部分は色素が入りやすいため、根元〜中間から塗布し、時間差で毛先につなげます。放置時間は5分〜15分。目で見て発色をチェックし、狙った色味になった瞬間に乳化・シャンプーします。

📊 2025年トレンド ペールトーン調合レシピ

ベース状態 (ブリーチ回数) 調合レシピ (ウエラ イルミナ使用例) 放置時間 施術時間(目安)
17レベル (目安2回) [ペールラベンダー] オーキッド10 : クリスタル = 1 : 3 + オキシ 3% (1:2) (ミディアムヘア目安: 1剤合計40g + 2剤80g) 10〜15分 約180分
18レベル (目安3回) [アイスブルー] オーシャン8 : オーキッド10 : クリスタル = 1 : 0.05 : 2 + オキシ 1.5% (1:2) (ミディアムヘア目安: 1剤合計60g + 2剤120g) 5〜10分 約240分
18レベル (目安3回) [ペールグリーン] フォレスト8 : オーキッド10 : クリスタル = 1 : 0.03 : 3 + オキシ 1.5% (1:2) (ミディアムヘア目安: 1剤合計60g + 2剤120g) 5〜10分 約240分

顧客対応:ダメージの「限界」をどう説明するか

ペールトーンを希望されるお客様には、施術前に「限界」を共有することが不可欠です。「この色はブリーチが最低2回、理想は3回必要です」「3回行うと、今後のパーマは難しくなりますし、毎日のヘアケアも必須になります」と、メリットとデメリットを具体的に説明します。私の経験上、リスクを正直に伝えた上で、それでもやりたいというお客様は、その後のダメージケアにも協力的です。無理な施術で信頼を失うことこそが、サロンにとっての「限界」です。

プロのコツとNG例:限界を超える「可能性」

ペールトーンの「可能性」は、ダメージを最小限に抑える薬剤選定と精密な技術にあります。限界ギリギリの施術だからこそ、プロの技が光ります。サロンでよくある失敗と、それを回避するテクニックを見ていきましょう。

⚖️ ペールトーン施術 NG vs OK

❌ NG例
  • ブリーチ1回で寒色系ペールに挑戦する
  • 補色を入れすぎて毛先が沈む(濁る)
  • オンカラーで6%オキシを使い、髪を消耗させる
  • ベースの黄みが残ったままオンカラーする
✅ OK例
  • 18レベル以上のベースを徹底的に作る
  • 補色は「耳かき一杯」単位で精密に調整する
  • オンカラーは1.5%3%の低オキシを使用
  • クリア剤を30%以上使い、透明感と均一性を確保

⚠️ プレックス剤の使用は「可能性」を広げる鍵です。近年のブリーチ施術の「限界」を引き上げているのが、シュワルツコフファイバープレックスに代表されるプレックス系処理剤です。ブリーチ剤に添加するだけで、毛髪内部の結合を保護し、ダメージを大幅に軽減できます。ペールトーンのような複数回ブリーチが前提の施術には、もはや必須アイテムと言えるでしょう。

失敗時のリカバリー方法

ケース1:色が沈み込みすぎた(補色が強すぎた)

特に毛先のダメージ部分で起こりがちです。慌てて脱染剤を使うと、さらにダメージが進行します。まずはシャンプー台で炭酸泉やアルカリ除去剤を使って軽く色を落とします。それでも残る場合は、クリア剤 : シャンプー = 1 : 1オキシ1.5%を少量加えたもので優しくシャンプーすると、表面の色素を安全に落とせる場合があります。

ケース2:ムラになった(黄ばみが残った)

ブリーチのベースメイク失敗が原因です。この場合、オンカラーで修正するのは困難です。お客様に謝罪と説明の上、黄みが残っている部分にのみ、ブリーチ剤(低オキシ)を再塗布し、ベースを均一に整えるしかありません。ペールトーンは「均一なベース」が全てであり、妥協は許されません。

ケース3:色が入らなかった(発色しない)

これは、①ベース明度が足りない(黄みに負けた)、②クリア剤で薄めすぎた、のどちらかが原因です。①の場合はブリーチからやり直すしかありません。②の場合は、クリア剤の比率を減らし、色素を濃くした薬剤で再塗布します。放置時間は5分以内とし、急激な沈み込みに注意します。

ペールトーンに関するよくある質問(FAQ)

お客様の疑問に正しく答えることが、プロの信頼につながります。サロン現場でよく聞かれる質問と、プロとしての模範解答をまとめました。

Q1. ペールトーンカラーの色持ちはどれくらいですか? A. 正直にお伝えすると、非常に早いです。理想的な発色は1週間程度が目安です。ペールトーンは色素が非常に淡いため、シャンプーのたびに色味が抜けやすいのが特徴です。そのため、サロンでの施術時は「少し濃いめ」に入れて、色落ちの過程も楽しんでいただくようご提案しています。また、ご自宅でのカラーシャンプー(紫シャンプーやピンクシャンプー)の使用は必須です。

Q2. ブリーチは何回必要ですか? 1回では無理ですか? A. 髪質にもよりますが、最低2回は必要になるケースがほとんどです。特にトレンドの寒色系(ブルーやグリーン)をご希望の場合は、3回必要になることもあります。ブリーチ1回では黄みが強く残るため、ペールトーンの淡い色素が発色せず、濁った色になってしまいます。お客様の髪の履歴とダメージレベルを見極め、何回がベストかご提案します。

Q3. ペールトーンにしたいけど、ダメージの限界が怖いです… A. そのお気持ち、よく分かります。ペールトーンは髪への負担が最も大きいカラーです。だからこそ、当サロンではプレックス剤(ケアブリーチ)を使用し、ダメージを最小限に抑えながら施術します。また、オンカラーも1.5%などの低刺激な薬剤を使います。ただし、限界はあります。施術後のトリートメントケアや、ご自宅でのヘアケアが、美しい色を保つ鍵になります。

まとめ:ペールトーンの限界を理解し、可能性を引き出す

ペールトーンカラーの施術は、美容師の知識、技術、そして毛髪化学の理解が試される総力戦です。「限界」とは、ブリーチ回数であり、毛髪の体力です。この限界点を正確に見極め、プレックス剤や低オキシといった「可能性」を引き出すツールを使いこなし、お客様にリスクを誠実に説明すること。これら全てが揃って初めて、濁りのない美しいペールトーンが完成します。2025年のトレンドを牽引するペールトーン。その限界と可能性をマスターし、お客様の「なりたい」を叶えるプロフェッショナルであり続けましょう。私も、ヘアカラーレシピの研究を日々続けていきます。

私のYouTubeチャンネル「髪技屋さん」では、動画でダブルカラー施術手順を解説していますので、そちらも是非参考にしてください。

📚 参考文献

  • ウエラ プロフェッショナルズ 公式サイト(イルミナカラー)
  • ミルボン公式サイト(オルディーブ)
  • シュワルツコフ プロフェッショナル公式サイト(ファイバープレックス)
  • 日本ヘアカラー協会(JHCA)技術ガイドライン

※本記事はプロ美容師向けの技術情報であり、施術の安全性を保証するものではありません。アレルギーや毛髪の状態について懸念がある場合は、専門医やメーカーに相談してください。

この記事が役立ったら、美容師仲間とシェアして技術を高め合いましょう!

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【髪技屋さんのプロフィール】

■ 美容師歴・実績: 20年以上のベテラン美容師。🏆 全国大会入賞、📝 美容専門誌掲載の実績を持つ。

■ 活動内容: 髪の知識・技術全般の講師としても活動。プロも支持する技術で髪の悩みを解決。

■ YouTube: 動画数 1200本以上、総再生回数 2700万回、登録者 3.8万人を達成。

■ ブログ: 記事数 800本以上。ヘアケア、カラー調合、骨格別ヘアなど、髪のあらゆる疑問を解決。