はじめに
パーマの仕上がりは「還元」だけでなく「酸化」の精度で決まります。
「1剤の選定にはこだわるけれど、2剤はなんとなく使い分けている」という美容師さんは意外と多いのではないでしょうか。実は、私のサロンでも過去に、複雑な履歴のダメージ毛に対して2剤の選定を誤り、ウェーブがダレてしまった苦い経験があります。特に2025年は、ブリーチ毛やエイジング毛への対応力が求められる時代です。
この記事では、美容師歴20年以上の私の経験に基づき、明日から即実践できる「過酸化水素とブロム酸の使い分け」と、失敗を防ぐための具体的な手順を解説します。
パーマ2剤 トレンド背景
2025年は「酸性パーマ」の普及に伴い、ブロム酸の重要性が再認識されています。
近年のトレンドである波巻きパーマやニュアンスパーマは、ダメージレスな質感が求められます。これに伴い、従来のアルカリパーマだけでなく、酸性領域で施術するケースが急増しました。
ここで重要なのが、酸性領域では過酸化水素が反応しきれず「酸化不足」になりやすいという事実です。ダメージを抑えつつ、確実な結合を作るために、改めて2剤の化学的特性を深く理解し、適材適所で使い分けるスキルが必須となっています。
パーマ2剤の基本理論|オキシとブロムの違い
過酸化水素は「瞬発力と柔らかさ」、ブロム酸は「定着力とハリコシ」が特徴です。
パーマの原理は、1剤で切断したシスチン結合(S-S結合)を、2剤の酸化作用で再結合させることです。この「再結合」を担う主役が、過酸化水素(オキシ)と臭素酸ナトリウム(ブロム酸)です。
過酸化水素(オキシドール)
反応速度が非常に速く、短時間(約5分〜)で酸化が完了します。pHは酸性(2.5〜4.5前後)で安定しており、アルカリに傾いた髪を引き締める効果があります。仕上がりは柔らかく軽やかになりますが、高濃度や長時間放置はカラーの退色を招く恐れがあります。
臭素酸ナトリウム(ブロム酸)
反応が緩やかで、時間をかけて浸透・酸化させます(10分〜15分)。通常、濃度平衡を保つために⚠️ 2度付け(2回塗布)が必須です。pHは中性〜微アルカリ性(6.0〜8.0)のものが多く、塩結合が働くため、仕上がりにはハリ・コシと弾力が出ます。
施術手順と薬剤選定解説
診断に基づいた「意図のある2剤選定」が、再現性の高いパーマを作ります。
必ずお客様の髪質・ダメージレベル・既往施術歴(カラー・縮毛矯正等)を診断し、仕上がりイメージを共有してから施術に入ってください。認識のズレが失敗の原因になります。
📋 パーマ施術 3ステップフロー
カウンセリング&診断 (髪質・ダメージ・履歴)
1剤選定&ワインディング (ロッド・スライス調整)
2剤塗布&仕上げ (酸化コントロール)
STEP1: カウンセリングと髪質・ダメージ診断
2剤選びは、実はこの段階から始まっています。カラーの褪色を気にされているか、ボリュームを出したいか、抑えたいかを確認します。軟毛・細毛の方にはハリコシを出すブロム酸、硬毛・多毛の方には柔らかさを出す過酸化水素、といった仮説を立てます。
STEP2: 薬剤選定とワインディング
1剤の種類(チオ、シス、GMTなど)に合わせてロッドを選定します。2剤の入りを良くするため、クリープ期(中間水洗後の放置時間)を設けるのが現代の主流です。ロッド径は、2剤による形状固定時の「締まり(ブロム酸)」や「緩み(過酸化水素)」を考慮し、ブロム酸なら狙い通り、過酸化水素なら気持ち細めを選ぶのがコツです。
STEP3: 施術実行と仕上げ(酸化プロセス)
最も重要な工程です。軟化チェック後、中間水洗をしっかり行います。1剤が残留していると、2剤と反応して発熱したり、ダメージの原因になります。
- 過酸化水素の場合: 放置時間は5分〜10分程度。基本的に1度付けでも反応しますが、ムラを防ぐため2回に分けて塗布することを推奨します。
- ブロム酸の場合: 放置時間は10分〜15分。⚠️ 必ず2度付けを行います。1回目で表面、2回目で内部まで浸透させるイメージで、時間を空けて塗布します(例: 7分+7分)。
📊 2剤の種類別 特徴比較チャート
| 成分名 | 効果・特徴 | 注意点 | おすすめ髪質・ダメージレベル |
|---|---|---|---|
| 過酸化水素 (オキシ) | 柔らかい質感、反応が速い、カラー退色少なめ | 過収斂のリスク、高アルカリ時の発熱 | 健康毛〜ミドルダメージ、硬毛、デジタルパーマ |
| ブロム酸 (臭素酸) | ハリ・コシが出る、弾力あるリッジ、ゆっくり反応 | 放置時間が長い、2度付け必須 | 軟毛、細毛、ハイダメージ毛、酸性パーマ |
髪質別アプローチ
剛毛・硬毛・多毛の場合
髪が硬くなりやすいため、質感を柔らかくする過酸化水素が適しています。1剤でしっかり軟化させ、2剤でスッと締めることで、扱いやすいカールになります。
軟毛・細毛・猫っ毛の場合
ボリュームが出にくいため、ハリコシを与えるブロム酸一択です。ロッド選定も、重力に負けないよう、想定より1〜2mm細めを選ぶと良いでしょう。
くせ毛の場合
元のくせとカールの相性を考えます。くせを活かすなら過酸化水素で馴染ませ、くせを矯正しつつカールを出すなら、デジタルパーマ(ホット系)×過酸化水素の組み合わせが有効です。
ダメージレベル別対応
ハイダメージ毛・ブリーチ毛
過剰な反応を避けるため、緩やかに作用する低濃度のブロム酸を使用することが多いです。私の経験上、ダメージ毛に過酸化水素を使うと、一気に酸化が進みすぎて「チリつき」の原因になることがあります。
エイジング毛
髪が痩せてキューティクルが弱っているため、軟毛同様にブロム酸で芯を持たせるアプローチが有効です。ただし、乾燥しやすいので、2剤処理後のトリートメント処理は必須です。
再現性UPのスタイリング指導
サロンでの仕上がりを自宅でも再現するには、2剤の特徴に合わせた乾燥方法が鍵です。
お客様には、使用した2剤の特性に合わせた乾かし方を伝えます。ブロム酸で仕上げたリッジのあるパーマは、少し水分を残した状態でムースやワックスを揉み込むと動きが出やすいです。一方、過酸化水素で仕上げた柔らかいパーマは、N.ポリッシュオイルなどをつけてから、手で優しく包み込むようにドライヤーを当てると、ツヤのあるカールが再現できます。
プロのコツ・NG行為
最大のNGは、2剤の「つけムラ」と「放置時間不足」です。
⚖️ 2剤処理 NG vs OK
❌ NG例
- ブロム酸なのに1度付けで終わる
- 中間水洗をせず1剤が残ったまま塗布
- 酸性パーマの後に過酸化水素を使用
- ロッドアウト直後に強くシャンプー
✅ OK例
- ブロム酸は時間を空けて2度付け
- 中間水洗でpHを整えてから塗布
- 酸性領域ならブロム酸を選択
- ロッドアウト後は優しくお流し
失敗時のリカバリー方法
- かかりが弱い場合: 酸化不足が原因の可能性があります。もう一度ロッドを巻き直し、ブロム酸でしっかり時間を置くことで復活することがあります(髪の余力が残っている場合)。
- かかりすぎた(チリついた)場合: 過酸化水素による過剰反応や、熱ダメージが疑われます。この場合、無理に伸ばそうとせず、酸熱トリートメントなどで内部補修を行いながら、徐々に落ち着かせる提案が必要です。
よくある質問(FAQ)
現場で美容師さんが迷いやすい疑問にお答えします。
Q1. 酸性パーマの2剤に過酸化水素を使ってはいけませんか?
推奨しません。過酸化水素は酸性領域では反応が弱まり、酸化不足(=かからない、取れる)の原因になります。酸性パーマには、pHの影響を受けにくいブロム酸を使用するのがセオリーです。
Q2. 2剤の放置時間を長くすれば、よりしっかりかかりますか?
いいえ、限界があります。過酸化水素は長時間置くと髪を漂白(退色)させたりダメージを与えます。ブロム酸も15分以上置いても反応は飽和し、逆に髪が乾燥してパサつく原因になります。規定時間を守ることが最良の結果を生みます。
Q3. デジタルパーマで2剤が「液体」と「クリーム」がありますが使い分けは?
根元の立ち上げや細かいロッドには浸透の良い「液体」、毛先のダメージ部分や広がりを抑えたい場合は保湿成分を含んだ「クリーム」がおすすめです。私は毛先中心のデジパならクリームタイプを多用します。
まとめ
2剤の特性を理解することは、プロ美容師としてのデザインの幅を広げます。
今回は「パーマ2剤の役割」と「過酸化水素・ブロム酸の違い」について解説しました。トレンドの酸性パーマや、複雑化するダメージ毛に対応するためには、1剤だけでなく2剤の選定眼が不可欠です。
- 柔らかさ・時短なら: 過酸化水素(健康毛〜硬毛向き)
- ハリコシ・弾力なら: ブロム酸(軟毛・ダメージ毛・酸性パーマ向き)
これらの理論を頭に入れた上で、ぜひ明日のサロンワークでお客様の髪質にベストな選択を実践してみてください。
📚 参考文献
- 日本パーマネントウェーブ協会 技術ガイドライン
- SHINBIYO (新美容出版) パーマ特集号
- 各メーカー(ミルボン、アリミノ等)薬剤テクニカルマニュアル
※本記事は美容師個人の経験に基づく技術情報であり、全てのお客様に当てはまるものではありません。髪質やダメージレベルに合わせて技術を調整してください。
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