パーマの工程｜1剤塗布から仕上げまで

はじめに

正確な診断と薬剤選定さえできれば、パーマはサロン最大の武器になります。

美容師歴20年以上の「髪技屋さん」です。サロンワークの中で「パーマがかからない」「ダメージでチリついてしまった」という経験は、誰もが一度は通る道ではないでしょうか。特に近年はカラーや矯正履歴が複雑化し、一昔前のマニュアル通りの施術では対応しきれないケースが増えています。

本記事では、明日からのサロンワークですぐに使える実践的な薬剤選定理論と、失敗を防ぐための詳細な施術フローを解説します。感覚に頼らない理論武装で、あなたの技術を確実なものにしていきましょう。

2025年パーマトレンドと顧客ニーズ

2025年は「ジェリーパーマ」や「ニュアンスパーマ」など、質感重視のデザインが主流です。

近年のトレンドは、作り込みすぎない「抜け感」がキーワードです。特に注目されているのが、K-POPアイドルの影響を受けたジェリーパーマ（ヒッピーパーマ）のような、根元からしっかりウェーブがありつつも、スタイリング剤で濡れ感を出すスタイルです。

一方で、顧客のニーズは「ダメージレス」と「再現性」に集中しています。「パーマは傷む」というイメージを払拭するために、酸性パーマや低温デジタルパーマといった、髪への負担を最小限に抑える技術の需要が急増しています。トレンドのデザインを、いかにローダメージで提供できるかが、2025年の美容師に求められるスキルです。

パーマの基本理論とメカニズム

パーマの成否は、適切な「還元」と確実な「酸化」のバランスで決まります。

基本をおさらいしましょう。パーマとは、1剤に含まれる還元剤（チオグリコール酸やシステインなど）が髪内部のシスチン結合（S-S結合）を切断し、ロッドで形状を変えた状態で、2剤の酸化剤（臭素酸ナトリウムや過酸化水素）が再結合させる化学反応です。

ここで重要なのがpH値のコントロールです。アルカリ性に傾くほどキューティクルが開き薬剤の浸透が良くなりますが、ダメージリスクも跳ね上がります。逆に酸性領域ではダメージは抑えられますが、反応が緩やかで技術的な難易度が上がります。このバランスを髪質に合わせて調整することが、プロの腕の見せ所です。

施術手順と薬剤選定解説

失敗の9割は、事前の診断不足と薬剤選定ミスから生じています。

STEP1: カウンセリングと髪質・ダメージ診断

診断では「剛毛・軟毛」「くせ毛・直毛」といった髪質に加え、過去の施術履歴を徹底的にヒアリングします。特に⚠️ 縮毛矯正やブリーチの履歴は見落とすと断毛事故につながるため、必ず目視と触診、そして問診で確認してください。

パーマ前のカットで、基本的な髪の切り方の理論を応用し、薬剤が浸透しやすいベースを整えておくことも重要です。

STEP2: 薬剤選定とワインディング

診断結果に基づき、以下の基準で1剤を選定します。

• 健康毛・剛毛: チオグリコール酸（pH8.0〜9.0程度）
• 軟毛・軽度ダメージ: システインまたはシステアミン（コスメ系）
• ハイダメージ・エイジング毛: 酸性領域のGMTやスピエラ、または酸性チオ

ワインディングでは、希望のカールに合わせてロッドを選定します。標準的なウェーブなら13mm〜17mm、トレンドの大きめカールなら20mm以上を使用します。スライス幅はロッド径の等倍を基本とし、テンションはダメージ毛ほど緩めるのが鉄則です。

STEP3: 施術実行と仕上げ

1剤塗布後は、放置時間（標準10〜15分）を守りつつ、必ずテストカールを行います。ロッドを1本外し、直径の1.5倍程度の戻り具合か、ウェーブがしっかりと形成されているかを確認します。デジタルパーマの場合は、テストロッドを巻いておき、カールの弾力をチェックします。

軟化チェック後は、中間水洗（または中間処理）を丁寧に行い、余分な1剤を流します。これがダメージ軽減と持ちの良さに直結します。2剤は酸化不足を防ぐため、必ず2回塗布し、規定時間を厳守してください。

剛毛、軟毛、くせ毛、直毛への応用

剛毛・硬毛の場合: キューティクルがしっかりしているため、薬剤が浸透しにくい傾向があります。アルカリ度がやや高めのチオ系を選択するか、加温（遠赤外線など）を併用して浸透を促します。放置時間は長めに取りすぎるとダメージにつながるため、こまめなチェックが必要です。

軟毛・細毛の場合: 薬剤の影響を受けやすく、ハリコシがなくなりがちです。システインや低アルカリの薬剤を選び、ワインディング時のテンションはかけすぎないように注意します。ボリュームを出すために、根元まで巻き込む技法が有効です。

くせ毛の場合: 元のくせとパーマのウェーブが喧嘩しないよう配慮が必要です。くせが強い場合は、一度ストレート（クリームタイプ）の薬剤でくせを緩和させながらカールを作る「ストカール」的なアプローチや、デジタルパーマの熱処理で面を整える方法が適しています。

健康毛、ダメージ毛、エイジング毛への応用

健康毛: 基本通りの施術で問題ありませんが、かかりにくい（撥水毛）場合は、前処理でアルカリ水などを使用し、キューティクルを少し開いてから1剤を塗布すると効果的です。

ダメージ毛: 前処理としてPPTやCMC（細胞膜複合体）を補給し、髪内部の空洞を埋めてから施術します。薬剤は酸性タイプや、減力したシステアミンを使用。私のサロンでは、ダメージ毛には酸性デジタルパーマを推奨し、60度〜80度の低温でじっくりかけることで、パサつきを抑えています。

エイジング毛: 加齢により髪が細く、ダメージを受けやすくなっています。強い薬剤はNGです。ボリュームアップが目的のケースが多いため、根元の立ち上がりを重視したロッド選定と、優しい薬剤（酸性〜中性域）での施術が求められます。

再現性UPのスタイリング指導

サロンの仕上がりを自宅でも再現できてこそ、プロの仕事です。

お客様には「乾かし方」を丁寧にレクチャーしましょう。ウェーブスタイルの場合、完全に乾かしきるとカールが伸びてしまうことがあります。根元はしっかり乾かし、毛先は少し水分が残っている状態でN.ポリッシュオイルやムースなどのスタイリング剤を揉み込むよう指導します。

特にデジタルパーマの場合は、「指でくるくるとねじりながら乾かす」ことでカールが復活することを伝えます。具体的な商品名（例：ミルボン ジェミールフランなど）を挙げて提案すると、お客様も迷わず購入できます。

プロが教える成功のコツとNG行動

「なんとなく」の作業を排除し、一つ一つの工程に意味を持たせることが成功への近道です。

⚠️ 注意点: 軟化チェックはおざなりになりがちですが、ここが最も重要です。タイムだけで判断せず、必ず目と手で髪の状態を確認してください。

失敗時のリカバリー方法

パーマがかからなかった場合: ダメージが原因でなければ、ロッドを細くするか薬剤を少し強くしてかけ直します。ダメージがある場合は、無理にかけ直さず、スタイリングでのカバーを提案するか、日を改めてケア後に施術します。

かかりすぎた（チリチリ）場合: これは美容師として最も避けたい事態ですが、起きてしまった場合は、直ちにストレート剤（クリームタイプなど）をごく短時間塗布して形状を緩和させるか、酸熱トリートメントで内部補修を行いながら収まりを良くする対処が必要です。決して隠したりせず、誠実に対応しましょう。

よくある質問（FAQ）

現場で若手美容師やお客さまからよく受ける質問をまとめました。

まとめ

2025年のパーマは「診断」と「ダメージレス」が鍵です。

今回解説したプロ美容師向けパーマ理論と施術手順を実践すれば、失敗のリスクを大幅に減らし、お客様に喜ばれるデザインを提供できるようになります。特に、事前の髪質診断と適切な薬剤選定は、技術者の誠実さが一番伝わる部分です。

明日のお客様に、自信を持って「パーマかけましょう！」と提案できるよう、まずはウィッグで新しい薬剤のテストを始めてみてください。技術の引き出しが増えれば、美容師の仕事はもっと楽しくなります。

※本記事は美容師個人の経験に基づく技術情報であり、全てのお客様に当てはまるものではありません。髪質やダメージレベルに合わせて技術を調整してください。

この記事が役立ったら、美容師仲間とシェアして技術を高め合いましょう！