秋冬のヘアオイル使用法|朝夜のタイミング別効果的な使い方

この記事の結論

秋冬のヘアケアでヘアオイルの効果を最大化する鍵は、「夜の補修」と「朝の保護」という明確な使い分けにあります。夜はドライヤーの熱や睡眠中の摩擦から髪を守り、朝は日中の乾燥や静電気を防ぐバリアとして機能させることが、うるおいを保つ最短ルートです。

秋冬のヘアオイル使用法|朝夜のタイミング別効果的な使い方

はじめに:秋冬こそヘアオイルが「朝晩必須」な理由

秋冬の乾燥対策は「朝と夜」両方のオイルケアが鍵です。美容師歴20年以上の髪技屋です。私のサロンでは、毎年10月を過ぎると、髪の「パサつき」「広がり」「静電気」に関するご相談が、夏場の約1.5倍に増える傾向があります。

多くの方が「ヘアオイルを使っているのに乾燥する」と悩んでいますが、その原因の多くは「使うタイミング」と「目的」が合っていないことにあります。

ヘアオイルは万能アイテムのように思われがちですが、実は使うタイミングによってその主な役割が変わります。

  • 夜(お風呂上がり)ダメージ補修保湿。ドライヤーの熱や睡眠中の摩擦から髪を守る「守備」の役割。
  • 朝(スタイリング時)ツヤ出し外部刺激からの保護。日中の乾燥した空気や静電気を防ぐ「攻撃(バリア)」の役割。

特に空気が乾燥する秋冬は、夜のケアだけでは日中のうるおいを維持しきれず、朝のケアだけでは夜間のダメージをカバーできません。だからこそ、朝と夜、両方のケアが不可欠になるのです。

この記事では、なぜ秋冬にヘアオイルが必要なのか、そして「夜の濡れた髪」と「朝の乾いた髪」それぞれに最適な、効果を最大化する使い方を徹底的に解説します。

なぜ秋冬は髪がパサつく?乾燥と静電気のメカニズム

秋冬の髪トラブルは「湿度の低下」と「暖房」が主な原因です。髪の毛は、健康な状態であれば約11%〜14%の水分を含んでいますが、湿度が低下すると髪内部の水分が空気中に奪われていきます。

気象庁のデータを見ても、東京の平均湿度は8月が約77%であるのに対し、1月は約52%まで低下します。さらに室内では暖房の使用により、湿度が40%以下になることも珍しくありません。

湿度が40%を下回ると、髪は水分を失いやすくなるだけでなく、静電気も発生しやすくなります。静電気は、乾燥した髪同士が摩擦することで発生し、キューティクルを傷つけ、さらなる乾燥とダメージを招く悪循環を生みます。

ここでヘアオイルが重要な役割を果たします。

ヘアオイルが乾燥に効く仕組み

ヘアオイルの主成分である「油分」は、髪の表面に薄い膜(コーティング)を作ります。この膜が、髪内部からの水分の蒸発を防ぐ「フタ」の役割を果たします。さらに、外部の乾燥した空気や、衣類との摩擦による静電気からも髪を守るバリアとなります。

つまり、秋冬のケアは「水分を補う」こと以上に、「今ある水分をいかに蒸発させないか」「摩擦からいかに守るか」が重要であり、そのためにヘアオイルによる油分のコーティングが最も効果的なのです。

美容師が実践する「朝夜別」ヘアオイル解決策3ステップ

夜は「補修と保護」、朝は「ツヤとバリア」と目的を分けます。ヘアオイルの効果を最大限に引き出すには、髪の状態(濡れているか、乾いているか)に合わせて使い方を変える必要があります。ここでは、私がサロンでお客様に必ずお伝えしている、朝夜別の3ステップをご紹介します。

ステップ1:【夜のケア】補修と保護(お風呂上がりの濡れた髪に)

夜のケアの最大の目的は、「ドライヤーの熱ダメージ」「睡眠中の摩擦ダメージ」から髪を守ることです。髪が濡れている状態はキューティクルが開いており、最も無防備な状態。ここにオイルで保護膜を作ることが重要です。

1. タオルドライ まず、髪をこすらず、タオルで優しく挟み込むようにして水分を取ります(ポンピング)。ゴシゴシ拭くとキューティクルが剥がれてしまいます。

2. オイルを手に伸ばす 適量(ミディアムで1〜2プッシュ)を手のひらに取ります。両手をこすり合わせ、手のひら全体に白っぽくなるまでしっかりと伸ばします。このひと手間で、オイルが髪にムラなく均一につくようになります。

3. 毛先から中間へ塗布 髪をかき分けるように、内側から手ぐしを通してなじませます。⚠️ 注意: 絶対に根元や頭皮にはつけないでください。ベタつきや毛穴詰まりの原因になります。最もダメージを受けやすい「毛先」を中心に、残ったオイルを「中間」になじませます。

4. コームで均一化 目の粗いコーム(くし)で髪全体を優しくとかします。これにより、オイルが髪1本1本に均一に行き渡り、ドライヤーの熱ムラを防ぎます。

5. ドライヤーで乾かす 根元から乾かし始め、全体が8割ほど乾いたら、一度冷風を当ててキューティクルを落ち着かせます。 💡 ポイント: この「8割乾いた状態」で、さらにオイルを半プッシュ毛先に追加する「追いオイル」は、ハイダメージ毛の方に特に有効なテクニックです。

夜にこれを行うことで、睡眠中に枕やシーツと髪がこすれる際の摩擦が大幅に軽減され、翌朝のまとまりが格段に変わります。科学的にも、睡眠中の成長ホルモンが髪の補修を行うため、そのサポートとしても夜の保湿は理にかなっています。

ステップ2:【朝のケア】ツヤと保護(スタイリング時の乾いた髪に)

朝のケアの目的は、「日中の乾燥(暖房など)」「紫外線」「静電気」といった外部刺激から髪を守るバリアを作ること、そして「ツヤ出し」「まとまり」を良くすることです。

1. オイルの量を調整 朝の使用量は、夜よりも少なくします。ごく少量(半プッシュ〜1滴)で十分です。つけすぎると、ベタついて不潔な印象を与えてしまいます。

2. 手のひらでしっかり伸ばす 夜と同様、手のひらで透明になるまでしっかり伸ばします。

3. 表面と毛先になじませる 髪の表面を優しくなでるようにして、ツヤを出します。特にアホ毛(短い毛)が気になる頭頂部付近は、手のひらに残ったごく微量のオイルで軽く押さえます。 ⚠️ 注意: この時も頭皮にはつけず、髪の表面だけを狙います。

4. 毛先を整える 最後に、一番パサつきやすい毛先にオイルを握り込むようにつけて、束感とまとまりを出します。2025年のヘアトレンドであるレイヤースタイルなどは、毛先に束感を出すことで、よりスタイルが引き立ちます。

朝にこのケアを追加するだけで、日中の乾燥したオフィスや屋外でも髪の水分蒸発を防ぎ、静電気の発生を強力に抑えることができます。

ステップ3:【秋冬の使い分け】オイルの選び方

朝夜のタイミングだけでなく、季節に合わせてオイルの種類を見直すことも重要です。

夏場は紫外線カット効果があり、サラッとした「ライトタイプ」のオイルが好まれます。しかし、秋冬はそれでは保湿力が足りません。

秋冬に推奨するのは、「しっとり系」または「やや重め」のテクスチャのオイルです。保湿力やコーティング力が高い植物性オイル(例:アルガンオイル、バオバブオイル、椿油など)がリッチに配合されているものが適しています。

目的別オイルの選び方

  • 夜の補修(アウトバス)重視:内部補修成分(CMC類似成分など)が配合され、保湿力が高いもの。
  • 朝のスタイリング重視:ツヤ出し効果が高く、ベタつきにくいが、適度な重さでまとまるもの。

もし1本で済ませたい場合は、「夜は2プッシュ、朝は半プッシュ」のように、量で質感をコントロールするのが現実的です。

現役美容師が教えるプロのコツとNG行為

オイルは「温める」「とかす」で効果が倍増し、「つけすぎ」で台無しになります。私のサロンでは、ヘアオイルの使い方一つで髪の状態が劇的に変わるお客様を何百人と見てきました。ここでは、失敗を防ぎ、効果を高めるためのプロのコツと、絶対にやってはいけないNG行為を解説します。

✅ プロが実践する「プラスワン」のコツ

1. 週1回の「温感オイルパック」 特にダメージと乾燥がひどい時におすすめなのが、お風呂での集中ケアです。シャンプー後、軽く水気を切り、ヘアオイルを通常の2〜3倍量とり、毛先中心になじませます。その後、蒸しタオルやシャワーキャップで髪全体を包み、浴槽に5〜10分浸かります。湯気のスチーム効果でオイルが髪内部に浸透しやすくなり、見違えるほどしっとりします。その後、通常通りトリートメントをして洗い流してください。

2. 「湿気バリア」塗布 秋冬は乾燥だけでなく、雨や雪の日の「湿気」で髪が広がることもあります。そうした日は、朝のスタイリングの最後に、オイルを1滴だけ手のひらに伸ばし、髪の表面全体を薄くコーティングします。これが湿気を弾くバリアとなり、スタイルが崩れにくくなります。

3. オイルは「塗る」のではなく「なじませる」 オイルが髪の表面で固まっている(ムラになっている)方をよく見かけます。オイルは必ず手のひらで体温で温めながら透明になるまで伸ばし、手ぐしを通して「なじませる」意識が重要です。このひと手間で、ベタつきを防ぎ、均一な保護膜を作ることができます。

⚠️ これだけは避けて!NG行為ワースト3

NG1:頭皮・根元からつける これは最も多い失敗例です。頭皮からは皮脂が分泌されており、そこにオイルを加えると、毛穴が詰まり、ベタつき、かゆみ、さらには頭皮環境の悪化につながる可能性があります。「寝る前にオイルをつけるとハゲる」という噂は医学的根拠がありませんが、頭皮につけすぎればトラブルの原因にはなります。オイルは必ず「中間から毛先」と覚えてください。

NG2:つけすぎ(適量がわからない) 「乾燥するから」とオイルを大量につけてしまうと、髪が油でギトギトになり、「何日もお風呂に入っていない人」のような不潔な印象を与えてしまいます。適量がわからない場合は、「少し足りないかな?」と感じる量(ショート1滴、ミディアム1〜2滴、ロング2〜3滴)から始め、足りなければ1滴ずつ足してください。

NG3:タオルドライが不十分な髪につける 髪がビショビショに濡れた状態でオイルをつけても、水分がオイルを弾いてしまい、うまく浸透・コーティングできません。逆にドライヤーの時間も長くなり、ダメージの原因に。必ず「水滴が滴らない程度」まで、しっかりタオルドライしてから塗布しましょう。

リアルな声:朝夜ケアでパサつきが落ち着いた成功事例

適切なケアを2週間続ければ、髪の手触りは確実に変わってきます。ここでは、私のサロンで実際にあったお客様の変化をご紹介します。

【事例:A様 30代後半・ミディアムヘア・オフィスワーク】

ご来店時の悩み: 「毎年、秋から冬にかけて髪が爆発するように広がり、静電気がひどい。毎日ヘアオイル(しっとり系)を夜に3プッシュもつけているのに、夕方には毛先がパサパサになる。」

プロの診断と提案: A様の髪を拝見したところ、典型的な「インナードライ(内部乾燥)」状態でした。原因は、夜のオイル量が多すぎることによるベタつきと、朝の保護ケアがゼロだったことです。

そこで、以下の2点を徹底していただくようお願いしました。

  1. 夜のケア変更:オイルの量を3プッシュから1.5プッシュに減らす。その代わり、塗布後に必ずコームでとかし、ドライヤーで8割乾かした後に「半プッシュ追いオイル」をしてから完全に乾かす。
  2. 朝のケア追加:スタイリングの最後に、オイル「1滴」を手のひらにしっかり伸ばし、髪の表面と毛先をなでるようにコーティングする。

2週間後の結果: 次にA様がご来店された際、髪の状態は明らかに変わっていました。「あんなに悩んでいた日中のパサつきが気にならなくなり、静電気もほとんど起きなくなりました。オイルの総量は減ったのに、髪は一日中しっとりしています」と、大変喜んでいただけました。

この事例のように、重要なのはオイルの「量」ではなく「タイミング」と「均一性」です。特に朝の「1滴バリア」は、秋冬の乾燥対策に非常に効果的です。私のサロンでは、過去10年間で少なくとも500名以上のお客様が、この朝夜使い分けで秋冬の乾燥トラブルを乗り越えています。

よくある質問(FAQ)

オイルとミルクの順番や、ベタついた時の対処法を解説します。ここでは、お客様から特によく寄せられるヘアオイルに関する質問にお答えします。

Q1. ヘアオイルは毎日使ってもいいですか?

A. はい、特に秋冬の乾燥シーズンやダメージ毛の方は、毎日の使用を推奨します。 ヘアオイルは髪の表面をコーティングし、日々のダメージ(熱、摩擦、乾燥)から守る「保護膜」の役割を果たします。ただし、頭皮にはつけず、毛先中心に使用してください。もし髪が健康でベタつきやすいと感じる場合は、夜のみの使用にするか、1日おきにするなど、ご自身の髪の状態に合わせて調整してください。

Q2. オイルをつけすぎてベタベタした時の対処法は?

A. いくつか対処法があります。 まず、乾いたタオルでベタついた部分を優しく挟み込み、余分な油分を吸い取ります。それでもベタつく場合は、ドライヤーの温風を当てながら手ぐしでほぐすと、オイルが揮発・分散してサラッとすることがあります。 ⚠️ 注意: 時間がない時の最終手段として、ベビーパウダーやフェイスパウダーを軽くはたき、ブラシで払い落とす方法もありますが、つけすぎると白くなるので注意が必要です。

Q3. ヘアミルクとヘアオイル、どっちを先に使いますか?

A. 「ミルクが先、オイルが後」が正解です。 化粧水(水分)の後に乳液(油分)でフタをするスキンケアと同じ理論です。 ヘアミルクは水分と油分がバランスよく含まれ、主に髪の「内部補修・水分補給」が目的です。ヘアオイルはほぼ油分で、髪の「表面コーティング・ツヤ出し」が目的です。 タオルドライ後、先にミルクで内部を潤し、その後にオイルでフタをして水分と補修成分を閉じ込めるのが、最も効果的な使い方です。

Q4. ヘアオイルをつけすぎると、具体的にどうなりますか?

A. 様々なデメリットがあります。 第一に、髪がベタつき、重く、オイリーな(不潔な)印象を与えてしまいます。また、髪が束になってペタッとするため、ボリュームダウンの原因にもなります。さらに、余分なオイルが頭皮につくと毛穴を塞ぎ、かゆみやフケ、ニオイといった頭皮トラブルを引き起こす可能性も否定できません。何事も「適量」が最も大切です。

まとめ:朝夜の「Wコーティング」で秋冬の乾燥を乗り切る

秋冬のヘアオイルは、夜の補修と朝の保護という2つの役割があります。これまで解説してきたように、同じヘアオイルでも、使うタイミングでその効果は全く異なります。

【夜のケア(濡れた髪)】 目的:ダメージ補修、熱・摩擦からの保護 方法:タオルドライ後、毛先中心になじませ、コームでとかしてから乾かす。

【朝のケア(乾いた髪)】 目的:ツヤ出し、乾燥・静電気からの保護(バリア) 方法:ごく少量を手のひらで伸ばし、髪の表面と毛先をコーティングする。

私の美容師経験上、高価なトリートメントを月1回行うよりも、日々の正しいオイルケアを継続するほうが、髪の状態は確実に安定します。

今年の秋冬は、ぜひこの「朝夜Wコーティング」を実践してみてください。日中のパサつきや、服を脱ぐ際の静電気に悩まされることが、きっと少なくなるはずです。

📚 参考文献

  • 美容師向け技術情報サイト(2025年10月アクセス)
  • 大手化粧品メーカー ヘアケア研究レポート
  • 気象庁 過去の気象データ(湿度)
  • 各種美容メディア(マイベスト、FUDGE.jp等 2025年10月アクセス)

※本記事は一般情報であり、医療アドバイスではありません。アレルギーや症状が気になる場合は医師に相談してください。

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【髪技屋さんのプロフィール】

■ 美容師歴・実績: 20年以上のベテラン美容師。🏆 全国大会入賞、📝 美容専門誌掲載の実績を持つ。

■ 活動内容: 髪の知識・技術全般の講師としても活動。プロも支持する技術で髪の悩みを解決。

■ YouTube: 動画数 1200本以上、総再生回数 2700万回、登録者 3.8万人を達成。

■ ブログ: 記事数 700本以上。ヘアケア、カラー調合、骨格別ヘアなど、髪のあらゆる疑問を解決。