秋冬の頭皮乾燥|フケ対策とシャンプーの選び方

秋冬の頭皮乾燥|フケ対策とシャンプーの選び方

秋冬の乾燥フケが気になるあなたへ

秋冬になると急に頭皮がカサつき、黒い服の肩に落ちるパラパラとしたフケに悩んでいませんか? 美容師歴20年以上の髪技屋さんと申します。私のサロンでは、毎年11月から2月にかけて、頭皮の乾燥とかゆみ、そして「乾性フケ」の相談が急増します。この時期、暖房が効いた室内の乾燥した空気は、あなたが思っている以上に頭皮の水分を奪っています。

多くの方は「フケ=不潔」というイメージから、洗浄力の強いシャンプーで必死に洗おうとしますが、実はそれが逆効果になっているケースが非常に多いのです。秋冬のフケは、洗いすぎによる「乾燥」が原因であることがほとんどです。

この記事では、なぜ秋冬に頭皮が乾燥しフケが発生するのか、そのメカニズムを科学的根拠に基づいて解説し、美容師の視点から「これ以上悪化させないため」の具体的な3ステップ対策と、正しいシャンプーの選び方をご紹介します。

この記事の結論

秋冬の乾燥フケは「洗いすぎ」と「保湿不足」が原因です。洗浄力の強いシャンプーを避け、以下の3ステップを実践することが、健康な頭皮を取り戻す最短の道です。

  1. シャンプーの見直し: 洗浄力がマイルドな「アミノ酸系」に切り替える。
  2. 洗い方の見直し: 「38度以下のぬるま湯」で「指の腹」を使って優しく洗う。
  3. 保湿ケアの追加: お風呂上がりに「頭皮用ローション」で必ず保湿する。

なぜ秋冬はフケが出る?頭皮乾燥のメカニズム

秋冬のフケの多くは、頭皮の「バリア機能の低下」によって引き起こされます。 まず、フケには2種類あることを理解しましょう。あなたの悩みがどちらのタイプかを知ることが、対策の第一歩です。

あなたのフケはどっち?「乾性フケ」と「脂性フケ」

フケは、頭皮のターンオーバー(新陳代謝)によって剥がれ落ちた古い角質です。これは誰にでも起こる自然な現象ですが、量が異常に増えた状態が問題です。

  • 乾性フケ(乾燥タイプ)
    • 特徴: 小さく、カサカサ・パラパラしている。
    • 色: 白い。
    • 発生場所: 肩や首筋に落ちやすい。
    • 主な原因: 頭皮の乾燥、洗いすぎ、空気の乾燥(秋冬に多い)。
  • 脂性フケ(皮脂タイプ)
    • 特徴: 大きく、ベタベタ・ジメジメしている。
    • 色: 黄色っぽい。
    • 発生場所: 髪の根元にこびりつく。
    • 主な原因: 皮脂の過剰分泌、常在菌(マラセチア菌)の異常増殖。

この記事では、特に秋冬に急増する「乾性フケ」に焦点を当てて解説します。

秋冬に「乾性フケ」が悪化する3つの理由

夏は平気だったのに、なぜ秋冬になると急にフケが増えるのでしょうか。それには明確な理由があります。

  1. 1. 外気と暖房による「絶対的な乾燥」 冬は空気が乾燥している上に、室内ではエアコンやヒーターなどの暖房器具がフル稼働します。これにより、室内の湿度は40%以下になることも珍しくありません。肌がカサカサするのと同じように、頭皮の水分もどんどん奪われ、乾燥状態に陥ります。
  2. 2. 間違ったシャンプーによる「皮脂の取りすぎ」 頭皮は、自ら分泌する「皮脂」によって天然の保湿膜(皮脂膜)を作り、水分蒸発を防ぎバリア機能を維持しています。しかし、洗浄力の強いシャンプー(高級アルコール系など)を使ったり、1日に何度も洗ったりすると、この必要な皮脂まで根こそぎ洗い流してしまいます。
  3. 3. ターンオーバーの暴走 バリア機能を失った頭皮は無防備な状態です。わずかな刺激にも敏感になり、水分が蒸発しやすくなります(これを経皮水分蒸散量(TEWL)の増加と言います)。頭皮は「早く新しいバリアを作らなきゃ!」と慌ててターンオーバーを早めますが、その結果、まだ未熟な角質細胞がカサカサのフケとなって剥がれ落ちてしまうのです。

美容師が教える「乾燥フケ」対策3つのステップ

乾燥フケ対策の基本は「奪いすぎない洗浄」と「失った水分を補う保湿」です。 以下の3ステップを今日から実践してみてください。

ステップ1:【洗う】シャンプーを「アミノ酸系」に変える

最も重要なのがシャンプーの見直しです。ドラッグストアでよく見かける「スッキリ爽快!」を謳うシャンプーは、洗浄力が強すぎて秋冬の乾燥した頭皮には不向きな場合があります。

選ぶべきは「アミノ酸系」の洗浄成分です。

  • 洗浄成分の確認方法: 製品の裏側にある成分表示を見てください。水の次に記載されているのが洗浄成分です。 「ココイルグルタミン酸~」「ラウロイルメチルアラニン~」「ココイルメチルタウリン~」といった表示から始まるものがアミノ酸系(またはタウリン系)の目印です。
  • アミノ酸系を選ぶ理由: 洗浄力がマイルドで、頭皮に必要な皮脂や、うるおい成分である「セラミド」を守りながら洗うことができます。肌と同じ弱酸性であることも特徴です。

ステップ2:【洗う】お湯の温度と洗い方を見直す

シャンプー剤だけでなく、洗い方そのものも乾燥を助長している可能性があります。以下のポイントを守ってください。

  • お湯の温度は「38度以下のぬるま湯」 40度以上の熱いお湯は、皮脂を必要以上に溶かし出してしまいます。体温より少し高いくらいの「ぬるま湯」が鉄則です。
  • 予洗いをしっかり1分以上 シャンプーをつける前に、ぬるま湯だけで頭皮と髪をしっかり濡らします。これだけで汚れの7割は落ちると言われており、シャンプーの泡立ちが良くなり、使いすぎを防げます。
  • 「爪」ではなく「指の腹」で洗う フケが気になると、爪を立ててゴシゴシこすりたくなりますが、それは絶対NGです。頭皮に無数の傷を作り、バリア機能を破壊してしまいます。指の腹を使って、頭皮をマッサージするように優しく洗いましょう。

ステップ3:【潤す】お風呂上がりに「頭皮用ローション」で保湿する

顔を洗ったら化粧水をつけるのと同じように、⚠️ シャンプー後の頭皮も「保湿」が必要です。 お風呂上がりは皮脂が洗い流され、最も乾燥しやすいゴールデンタイムです。

タオルドライで髪の水分をしっかり取った後、髪をかき分けて頭皮に直接「頭皮用ローション(スカルプローション)」を塗布してください。

💡 頭皮用ローションの選び方

以下の成分が配合されているものがおすすめです。

  • 保湿成分: セラミド、ヒアルロン酸、コラーゲン、グリセリンなど
  • 抗炎症成分: グリチルリチン酸ジカリウム、アラントインなど(かゆみも抑える)

アルコール(エタノール)の配合量が多いものは、清涼感はありますが乾燥を助長する可能性があるので、敏感になっている時は避けるのが無難です。

プロが教えるシャンプー選びのコツとNG行動

プロとして気をつけているポイントは、お客様の「頭皮の状態」と「生活習慣」に合わせた製品選びです。 見た目のフケだけでなく、頭皮の「赤み」や「かゆみ」の有無も重要なサインです。

「薬用シャンプー」は必要?

「フケ用」と書かれたシャンプーには、大きく分けて2種類あります。

  1. 1. 保湿・抗炎症タイプ(化粧品・医薬部外品) 乾燥によるフケ・かゆみを防ぐタイプです。「グリチルリチン酸ジカリウム」などが配合されています。秋冬の乾性フケで、かゆみも併発している場合はこちらが適しています。例えば、「キュレル」や「ミノン」といった敏感肌向けの製品がこれにあたることが多いです。
  2. 2. 抗真菌タイプ(医薬部外品) 脂性フケの原因となるマラセチア菌(カビの一種)の増殖を抑える成分(ミコナゾール硝酸塩、ピロクトンオラミンなど)が配合されています。頭皮がベタつき、ジメっとしたフケが出る場合はこちらですが、乾性フケの方が使うと、さらに乾燥が悪化する可能性があります。

秋冬のカサカサしたフケの場合、まずはアミノ酸系シャンプーや、1の「保湿・抗炎症タイプ」から試すのがセオリーです。

⚠️ これだけは避けて!頭皮乾燥を悪化させるNG行動

良かれと思ってやっていることが、実は頭皮をいじめているかもしれません。以下の行動に心当たりがないかチェックしてください。

頭皮ケア 4つのNG

  • NG1:1日に2回以上のシャンプー 洗いすぎは乾燥の最大の敵です。皮脂が再生する時間(数時間~半日)を奪い、常にバリア機能が低下した状態になります。シャンプーは原則1日1回、夜に行うのがベストです。
  • NG2:朝シャン(特に冬) 朝シャンをすると、皮脂膜が再生されていない「無防備な頭皮」で、乾燥した冬の冷たい外気にさらされることになります。頭皮の乾燥を極端に進行させるため、避けてください。
  • NG3:熱いお湯(40度以上)でのすすぎ 前述の通り、熱いお湯は必要な皮脂まで奪います。シャワーの温度設定を必ず確認しましょう。
  • NG4:ドライヤーを使わず自然乾燥 髪が濡れたまま寝ると、頭皮が長時間湿った状態になります。これは乾燥とは逆に、雑菌(マラセチア菌など)が繁殖しやすい環境を作り出し、ベタつきや臭い、脂性フケの原因にもなり得ます。必ずドライヤーで頭皮から乾かしてください。

リアルな声:乾燥フケに悩んだお客様の改善事例

私のサロンで実際にあった、シャンプーと保湿ケアの見直しで改善したお客様の事例をご紹介します。

例えば、30代半ばの女性のお客様(Aさん)が、「11月に入ってから急にフケとかゆみが止まらない」と駆け込んできました。

  • 状況(いつ): 11月下旬。暖房を使い始めた時期。
  • ベース状態(髪質): 髪は細く、頭皮はもともと乾燥しやすい肌質。
  • 失敗内容(何が起きたか): 夏に使っていた「スッキリ系の市販シャンプー」を継続使用。フケを気にして、1日に2回(朝・夜)シャンプーしていた。頭皮は赤みがあり、カサカサに乾燥していた。
  • 原因分析(なぜ): 季節の変化(乾燥)に加えて、洗浄力の強すぎるシャンプーと洗いすぎによって、頭皮のバリア機能が完全に破壊されていました。
  • 解決+再現性(どう改善): まず、シャンプーを保湿成分(セラミド類似成分)配合のアミノ酸系シャンプーに切り替えてもらいました。そして、シャンプーは夜1回のみ、ぬるま湯で優しく洗うよう指導。さらにお風呂上がりに「頭皮用保湿ローション」の塗布を徹底してもらいました。 結果、2週間ほどでかゆみが治まり、1ヶ月後にはあれほど悩んでいたフケがほとんど目立たなくなりました。ご本人からは「フケが出ないだけで、こんなに自信を持って黒いニットが着られるなんて」と喜んでいただけました。

私のサロンでは、過去10年以上にわたり秋冬(11月〜2月)の乾燥相談を数百件以上受けていますが、そのうち約3割の方がAさんと同じように「急に細かいフケが出るようになった」と悩んで来店されます。多くの場合、季節に合わせたケア(洗浄力の調整と保湿)への切り替えができていないことが原因です。

頭皮乾燥に関するよくある質問(FAQ)

お客様からよくいただく質問について、プロの視点でお答えします。

Q1. セルフケアを続けてもフケが治りません。皮膚科に行く目安は?

A. 以下の症状がみられる場合は、セルフケアの範囲を超えている可能性があります。早めに皮膚科を受診してください。

  • シャンプーや保湿ケアを変えても、2週間以上フケが改善しない。
  • フケがカサブタのように厚くなっている。
  • 我慢できないほどの強いかゆみや、痛みがある。
  • 頭皮が広範囲にわたって赤くなっている、またはジュクジュクしている。

これらは、頭皮の乾燥ではなく「脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)」や「乾癬(かんせん)」など、別の皮膚疾患の可能性があります。

Q2. フケを放置するとどうなりますか?抜け毛の原因になりますか?

A. フケが大量に出ている状態は、頭皮環境が非常に悪化しているサインです。フケ自体が直接毛根を詰まらせて毛が抜け落ちるわけではありませんが、乾燥や炎症が続くことで頭皮の血行が悪くなり、健康な髪が育ちにくくなる環境と言えます。結果として、髪が細くなったり、抜け毛が増えたりする間接的な原因になる可能性は十分にあります。

Q3. フケが気になるので、爪を立ててゴシゴシ洗った方がスッキリします…

A. それは絶対にやってはいけない行為です。一時的にフケが取れてスッキリしたように感じても、頭皮のバリア機能である角質層を無理やり剥がし、傷つけているだけです。傷ついた頭皮はさらに乾燥し、炎症を起こし、かえってフケを悪化させる悪循環に陥ります。シャンプーは「汚れを落とす」ものであり、「フケを削り取る」ものではありません。必ず指の腹で優しく洗ってください。

Q4. 夏は平気なのに、冬だけフケが出ます。これはなぜですか?

A. それは、あなたの頭皮が乾燥の影響を受けやすい「乾燥肌」または「敏感肌」タイプである可能性が高いサインです。夏は湿度が高いため、頭皮の水分が保たれていて問題が表面化しにくいだけです。しかし、冬になり外気と暖房で空気が乾燥すると、一気に頭皮の水分が奪われ、バリア機能が低下して「乾性フケ」として現れます。季節性のフケは、「あなたの頭皮の保湿力が低下していますよ」という体からのSOSだと捉え、秋冬は保湿重視のケアに切り替える必要があります。

まとめ:秋冬の頭皮ケアは「保湿」がすべて

秋冬の頭皮乾燥と乾性フケは、不潔だからではなく、ケアの方法が季節に合っていないために起こります。

大切なのは、「皮脂を取りすぎないマイルドな洗浄」と「顔と同じレベルの保湿」です。以下の3点を、今日からぜひ実践してみてください。

  1. シャンプーは「アミノ酸系」に切り替える。
  2. お湯の温度は「38度以下」で、優しく洗う。
  3. お風呂上がりは「頭皮用ローション」で必ず保湿する。

正しいシャンプーの選び方と保湿ケアを習慣にすることで、乾燥する季節でもフケやかゆみに悩まされない、健康な頭皮環境を保つことができます。もしシャンプー選びに迷ったら、お近くのドラッグストアの薬剤師さんや、行きつけの美容師に「乾燥肌向けのアミノ酸系シャンプーはどれですか?」と相談してみるのも良いでしょう。

📚 参考文献

  • 日本皮膚科学会ガイドライン「頭皮の乾燥とフケに関する見解」
  • 厚生労働省「化粧品・医薬部外品の成分表示について」
  • 持田ヘルスケア株式会社「フケ・かゆみの原因と対策」
  • 第一三共ヘルスケア「頭皮の乾燥とターンオーバー」
  • Amazon製品レビュー(2025年10月時点のシャンプー・ローション評価)

※本記事は一般情報であり、医療アドバイスではありません。アレルギーや症状が気になる場合は医師に相談してください。

この記事が役立ったら、美容師仲間とシェアして情報を共有しましょう!

#頭皮乾燥 #フケ対策 #シャンプー選び #秋冬ヘアケア #美容師監修 #保湿ケア

【髪技屋さんのプロフィール】

■ 美容師歴・実績: 20年以上のベテラン美容師。🏆 全国大会入賞、📝 美容専門誌掲載の実績を持つ。

■ 活動内容: 髪の知識・技術全般の講師としても活動。プロも支持する技術で髪の悩みを解決。

■ YouTube: 動画数 1200本以上、総再生回数 2700万回、登録者 3.8万人を達成。

■ ブログ: 記事数 700本以上。ヘアケア、カラー調合、骨格別ヘアなど、髪のあらゆる疑問を解決。