はじめに:ブリーチ毛の「沈み込み」は永遠の課題
ブリーチ毛の沈み込みは、薬剤選定と塗布技術で回避できます。美容師歴20年以上の「髪技屋さん」です。ブリーチオンカラーは透明感カラーの主流ですが、毛先のハイダメージ部分が濁ったり、暗く沈み込んだりする「過剰吸着」は、多くの美容師が直面する悩みですよね。私のサロンでも、ブリーチカラーの施術は全体の3割を超えますが、特に複雑な履歴を持つお客様への対応は神経を使います。この記事では、沈み込みのメカニズムから、b-exの注目の新色「KIRATERA」を使った具体的な回避テクニック、調合レシピまでを徹底解説します。
2025年トレンドとブリーチ毛の「沈み込み」リスク
2025年のトレンドは、沈み込みと隣り合わせの「高発色×透明感」です。近年のサロントレンドは、赤みを徹底的に排除したスモーキーベージュや、高彩度なピンク系が主流です。これらはすべて、16レベル以上のブリーチベースが前提となります。しかし、お客様の髪は縮毛矯正や日々のアイロンで、見た目以上にダメージが進行しているケースが多いです。高明度・高ダメージの髪は、薬剤の染料を過剰に吸着しやすく、特にアッシュ系やマット系は毛先が緑や灰色に濁るリスクが非常に高くなります。トレンドを追うほど、ダメージコントロールと沈み込み回避の技術が不可欠になるのです。
なぜ沈む?ブリーチ毛の「過剰吸着」徹底解剖
沈み込みの主原因は、ダメージによる「ポーラス化」と「染料の過剰反応」です。ブリーチを繰り返した髪は、キューティクルが剥がれ、内部のタンパク質が流出し、スポンジのようにスカスカの状態(ポーラス化)になります。この「穴」に、オンカラーの染料(特に分子量の小さい酸化染料)が必要以上に深く入り込み、濃く発色してしまう現象が「沈み込み」です。
さらに、ハイダメージ毛はpHがアルカリ性に傾きやすいため、1剤のアルカリと過酸化水素(オキシ)が過剰に反応し、発色が早まりすぎます。特に水分が少なく乾燥している毛先は薬剤の浸透が早く、根元や中間部とのタイムラグも加わり、深刻な色ムラを引き起こします。沈み込みは、単なるダメージの問題ではなく、毛髪科学と薬剤反応の複合的な結果なのです。
b-ex新色「KIRATERA」Grey Mat 徹底レビュー
b-exの新ライン「KIRATERA」は、高濃度設計で沈み込みを抑える工夫がされています。2024年から2025年にかけて注目のb-exの新ブランド「KIRATERA(キラテラ)」は、高発色・高彩度を特徴としています。その中でも新色の「Grey Mat(グレーマット)」は、近年の複雑な施術履歴(縮毛矯正やブリーチ)に対応し、日本人特有の赤みを消しつつ、透明感を出す設計になっています。
KIRATERAの大きな特徴は、高濃度設計でありながら「毛先の沈み込みも抑えられる」と公式に謳っている点です。これは、染料のバランスが緻密に計算されており、過剰な吸着を防ぎながら新生部と既染部を自然につなげることを意図しています。従来のマット系カラーが沈みやすかったのに対し、この「Grey Mat」は、1:2ミックス(2剤が2倍)を基本としながらも、クリア剤での調整(後述)とも相性が良く、ブリーチ毛へのオンカラーで失敗リスクを減らしたいプロにとって強力な選択肢となります。
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【実践】沈み込み回避!KIRATERAを使った施術手順と調合レシピ
沈み込み回避の鍵は「クリア剤の活用」と「オキシの使い分け」にあります。ここでは、b-exの新色「KIRATERA Grey Mat」を例に、ブリーチ毛(17レベルベース)への具体的な施術手順とヘアカラーレシピを紹介します。
カラー施術の48時間前には、必ずパッチテスト(皮膚アレルギー試験)を実施してください。アレルギー反応が確認された場合は施術を中止し、専門医の診断を受けてください。
📋 沈み込み回避 オンカラー施術手順
毛髪診断と薬剤選定(クリア混合比の決定)
オキシ1.5%~3%で調合(沈み込み危険箇所)
中間→毛先→根元の順で塗布・15分放置
STEP1: 毛髪診断と薬剤選定
まず、お客様のアンダーベース(ブリーチ後のレベル)とダメージレベルを正確に診断します。特に毛先が「テロン」としている場合や、濡らすと過剰に水分を吸う場合は、沈み込みリスクが「高」と判断します。KIRATERAを使用する場合、クリア剤(他社製品、例えばミルボン オルディーブのクリア剤 C-CLなど)を混合し、染料濃度を意図的に薄めます。
STEP2: 調合(オキシとクリアのコントロール)
沈み込みを防ぐための調合の基本は「低オキシ」と「クリア混合」です。ブリーチ毛へのオンカラーでは、リフト力は不要で、発色だけさせれば良いため、オキシは1.5%~3%を選択します。6%を使用すると反応が早すぎて沈み込みやすくなります。KIRATERAは1:2ミックスが基本ですが、クリア剤を加える場合はその分も計算に入れます。
STEP3: 塗布と放置
髪の染め方で最も重要なのが塗布順です。沈み込みやすい毛先を最後に塗布するか、毛先用の薬剤(クリア比率を上げたもの)を別途用意します。私のサロンでは、中間部(ダメージ中)→毛先(ダメージ高)→根元(新生部、またはダメージ低)の順で塗布し、薬剤の反応時間をコントロールすることが多いです。放置時間は薬剤によりますが、KIRATERAの場合、15分~20分を目安にテストしながら進めます。
📊 KIRATERA Grey Mat 沈み込み回避レシピ
| ベース状態 | 調合レシピ (ミディアムヘア目安) | 放置時間 | 施術時間(目安) |
|---|---|---|---|
| 17レベル(ダメージ中) 透明感マット希望 | ・KIRATERA Grey Mat (9Lv) 40g ・オルディーブ C-CL 10g (全体比20%) ・OXY 3% 100g (薬剤総量50gの2倍) (仕上がり 9レベルのクリアマット) | 15分 | 約100分 |
| 18レベル(毛先ハイダメージ) 濁らせたくない | ・KIRATERA Grey Mat (9Lv) 20g ・オルディーブ C-CL 20g (全体比50%) ・OXY 1.5% 80g (薬剤総量40gの2倍) (仕上がり 10レベルのシアーマット) | 10~15分 (テスト必須) | 約120分 |
| 16レベル(黄み残存) 赤みを消したい | ・KIRATERA Grey Mat (7Lv) 30g ・補色 Violet (他社) 3g (全体比10%) ・OXY 3% 66g (薬剤総量33gの2倍) (仕上がり 7レベルのスモーキーグレー) | 20分 | 約100分 |
髪質・ダメージ別 アプローチの極意
KIRATERAの「Grey Mat」は沈み込みにくい設計ですが、髪質に応じた調整は必須です。
- ハイダメージ毛(毛先): 上記レシピのように、クリア剤の比率を30%~50%に上げ、染料濃度を極端に薄めます。オキシも1.5%など低濃度にし、反応を緩やかにします。
- 新生部・既染部の塗り分け: 根元が暗い場合は、根元(リフトが必要)と毛先(沈み込み回避)で薬剤を完全に分ける必要があります。根元はKIRATERA 9Lv + 6%オキシ、毛先は 9Lv + クリア30% + 1.5%オキシ、といった2カップでの対応が確実です。
顧客タイプ別提案術
沈み込みリスクは、お客様へのカウンセリングで事前に共有することが重要です。
- 初めてのブリーチオンカラーのお客様: 「ブリーチ毛は色が入りやすい反面、毛先が暗く(沈み込み)なりやすい性質があります。初回は少しクリア剤を混ぜて、透明感を優先した仕上がりにしませんか?」と提案します。
- 複雑履歴のお客様(縮毛矯正・黒染め履歴): 履歴が不明瞭な部分は、沈み込みと染まらない部分が混在します。「毛先のダメージが強い部分は、お薬を薄めて塗布し、全体の均一感を最優先します」と伝え、ムラ修正の側面が強いことを説明します。
プロが教える「沈み込み」回避のコツとNG例
失敗の多くは「薬剤の過信」と「塗布順のミス」から起こります。20年の経験上、沈み込みを100%防ぐ薬剤はありません。KIRATERAのような優れた薬剤でも、髪の状態を見誤れば失敗します。重要なのは、薬剤の特性を理解し、それをコントロールする技術です。
⚖️ 沈み込み回避 NG vs OK
❌ NG例
- ハイダメージ毛に6%オキシを使用
- クリア剤を使わず、放置時間短縮で調整
- 毛先から薬剤をベタ塗りする
- ⚠️ 補色(V系)を入れすぎて濁る
✅ OK例
- 1.5%~3%の低オキシを選定
- クリア剤で染料濃度を30%希釈
- 中間→毛先の順で塗布し、反応を均一化
- 補色は全体の5%以下で微調整
8-1. 失敗リカバリー術(トラブルシューティング)
万が一、沈み込んでしまった場合の対処法を知っておくこともプロの技術です。
- 沈み込みすぎた場合: 最も安全なのは、アルカリクリア剤(例:オルディーブ C-CL)と6%オキシを1:2で混合し、沈んだ部分に塗布する方法です。染料をわずかに削り、明るさを戻します。これで戻らない場合は、微アルカリの脱染剤(ライトナー)を使用しますが、ダメージケアが必須です。
- ムラになった場合(中間は明るく、毛先が沈んだ): 沈んだ毛先に上記のアルカリクリア処置をしつつ、明るい中間部には、沈んだ毛先よりもさらに濃い(クリアなしの)薬剤を塗布し、色を合わせにいきます。高度な技術が要求されます。
- 色が入らなかった場合(ダメージしすぎて染料が定着しない): これは沈み込みとは逆の現象ですが、ブリーチ毛で起こり得ます。この場合は、酸性カラーやカラートリートメントで染料を補充する方が、髪への負担が少なく確実です。
9. サロン現場のリアルな声
KIRATERAのような新薬剤に対する現場の声を紹介します。
- 成功例 (30代・スタイリスト): 「KIRATERAのGrey Matは、クリアで50%薄めてもマット感がしっかり残る。ブリーチ毛へのスモーキーカラーが作りやすくなった。」
- 失敗例 (20代・アシスタント): 「18レベルの毛先にGrey Mat 9Lvを単品で使ったら、緑っぽく沈んでしまった。クリア混合が必須だと学んだ。」
- 筆者コメント: 私の経験上、新薬剤はまず「クリア50%混合・オキシ1.5%」という最も安全な設定から試し、その薬剤の「沈む力」を見極めるようにしています。
薬剤比較 (KIRATERA vs 従来カラー)
KIRATERAは、高発色と沈み込み抑制の両立を目指した薬剤です。従来のマット系・アッシュ系薬剤とKIRATERA Grey Matを比較した場合、最大の違いは「高濃度設計」にあります。
- 従来のマット系カラー: ブリーチ毛に使うと染料が入りすぎて緑や灰色に濁りやすい。クリアで薄めると、マット感自体も薄まりすぎる傾向があった。
- b-ex KIRATERA Grey Mat: 高濃度設計のため、クリアで30%~50%薄めても「色味(マット感)」が残るのが強み。つまり、沈み込み回避(染料濃度を下げる)と、色味表現(マット感の維持)を両立しやすい薬剤と言えます。
ただし、高濃度ということは、単品で使用すれば当然沈み込みます。KIRATERAは「クリア剤と組み合わせて使う」ことを前提とした、上級者向けの薬剤であると私は捉えています。
よくある質問(FAQ)
ブリーチ毛の沈み込みに関する疑問に、プロの視点でお答えします。
まとめ:沈み込みを制して、ハイトーンカラーを武器にする
ブリーチ毛の沈み込みは、恐れるものではなく「コントロールするもの」です。今回は、プロ美容師の大きな課題であるブリーチ毛の沈み込み回避テクニックと、b-exの注目新色「KIRATERA Grey Mat」の活用法を解説しました。
沈み込みの原因はダメージによる「過剰吸着」です。これを防ぐには、クリア剤による染料希釈と、低オキシによる反応制御が不可欠です。KIRATERA Grey Matのような高濃度設計の薬剤は、希釈しても色味が残りやすいため、沈み込みを回避しながら透明感を表現する強力な武器になります。この記事で紹介したプロ美容師のトレンドカラー技術を、ぜひ明日のサロンワークに活かしてください。
私のYouTubeチャンネル「髪技屋さん」では、動画でダブルカラー施術手順を解説していますので、そちらも参考にしてください。
📚 参考文献
- 株式会社b-ex(ビーエックス)公式サイト (KIRATERA製品情報)
- ミルボン公式サイト (オルディーブ製品情報)
- 日本ヘアカラー協会(JHCA)技術ガイドライン
※本記事はプロ美容師向けの技術情報であり、セルフカラーを推奨するものではありません。アレルギーや症状が気になる場合は医師に相談してください。
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